出版社内容情報
ヴォルテールは十八世紀文学と思想を開化させた作家であり,政治史,英雄史にとどまっていたこれまでの歴史を社会史,文化史の地盤に移した歴史家でもあって,その名声は生存中すでに全ヨーロッパに及んでいた.フランス史上豪之絢爛を誇った太陽王ルイ十四世の時代を人物,社会などあらゆる側面から分析した不朽の名著である.
内容説明
繁栄の時代はルイ十四世の執った、内政、司法、公安、商業、立法、および財政と諸法規に支えられ、目覚ましい発展を遂げた学問・芸術によって、その輝きを増した。近世のヨーロッパ社会においても重要な役割をはたしている、宗教の問題についても言及する。
目次
内政、司法、商業、公安、立法、軍規、海軍など。
財政と諸法規。
学問について。
芸術について。
芸術について 続き。
ルイ十四世時代のヨーロッパの芸術について。
宗教問題、記念すべき論争。
ルイ十四世時代のカルウァン主義について。
ヤンセン主義について。
キュイエチスムについて。
シナの典礼に関する論争。これが少なからず影響し、キリスト教がシナで禁止されるに至った経緯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bashlier
17
5/5 一二巻で戦争にスポットライトを当てていた一方、三巻は内政面に焦点を当てます。太陽王は武力で欧州を席巻するに留まらず、経済・文化面でも抜きんでていたとの主張です。完全無欠の王として讃えるに終始しては信ぴょう性が下がるところですが、宗教政策では痛烈に批判している点が美点。1685年ナント勅令廃止によりカルヴァン派を弾圧した結果、せっかく育成した工業が大部分ドイツに流出してしまいます。この失策はフランス経済の鉱工業生産に大打撃を与え、300年以上経過した現在も回復せず。著者の鋭い観察眼に敬服します。2023/03/25
Tomozuki Kibe
2
政治経済美術などの批評。ヴォルテールのことだからもっと「イギリスでは」の出羽守で切ってくるかと思ったらそうでもない。案外フランス第一ではある。ただし、ユグノーについては擁護の姿勢であるし、典礼問題についても「そのくらい信仰じゃないだろ外国じゃそのくらいは違いあって当然」とイエズス会を擁護する姿勢。 4巻は人名録。パラ読みだけして終わる。2025/01/04
Fumoh
2
第三巻ではフランス国内の学問・芸術、宗教、経済といった内政面について語る。とくに宗教問題に関しては、さすがのヴォルテールもルイ十四世に苦言を呈している。プロテスタントに特権を与えていたナント勅令を廃棄して、正反対の弾圧勅令を出した。そのため多くの商人や手工業者が国外に流れてしまう。これには、長年のガリカニスム問題で対立していたローマ法王はたいそう喜んでフランスとの関係を再構築しに向かっただろうが、財務を担当する家臣たちは大きく頭を抱えたことだろう。ルイの領土的野心を警戒していたドイツ諸国も、この事件を2024/06/16