出版社内容情報
とんちで知られる一休宗純。
その人生は波乱にみちたものであった。
将軍、天皇、僧侶、侍、民衆…さまざまな身分の人間の思惑が混ざりあい、混乱を極める室町時代。
高貴な身分でありながら出自を隠し、真剣に悟りを目指す一休宗純は迷いながら懸命に生きる。
矛盾と不条理と苦しみに満ちた世間のなかで、どのように生き、そして死ぬのかを考えるきっかけとなる傑作。
アングレーム国際漫画祭遺産賞を受賞し、世界からの評価が高まる坂口尚。
その遺作となる本作は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した幻の作品。
大判かつ高精細な印刷で、人生の指針を与えてくれる本作をお楽しみください。
第2巻では、ついに悟りを得る一休宗純、しかし権力を嫌う彼はさらに孤独となっていく様を描く。
内容説明
「欲望」の尽きぬ自我を抱え、「悟り」のために心の荒野を耕し続けるその生き方が、現代を生きる者の胸を打つ。日本漫画家協会賞“優秀賞”作品。全ページの原稿を再スキャンし、高精細に復元。美しき筆致が大判サイズで蘇る。悩みや迷いがあろうとも生きていく、ただひたすらに懸命に。それは室町時代も現代も決して変わらない。生きる指針を示す幻の傑作。
目次
第5話 堅田と京
第6話 道号一休
第7話 影
第8話 鴉
第9話 暗雲(その一)
第10話 暗雲(その二)
第11話 暗雲(その三)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっちも
14
謙翁が亡くなり、華叟のもとに弟子入りする。謙翁が仏道の「心」を実践することに重きを置くなら、華叟は「形」を重視する。修行三昧に明け暮れる。一休は他の弟子達が修行で形にはまってとらわれていくなか。謙翁との日々で修行を通して形にとらわれず、あるがままの世界と自分を了解するという要諦を理解しているから飲み込みが早い。他を圧倒していく。そうなればなるほど孤立して自分の仏教に埋没していく。比べるのもどうかと思うが自分も座禅してた時がある。ある時、ある瞬間、鳥の囀や風の音、雨の音と一体になる瞬間がある。2025/01/09
コリエル
8
何ものにも囚われぬ自由な心を学び、一つの大悟を果たした一休だったが、所詮それは俗界の中にあってはかき消されてしまう小さな悟りだった。何かに執着せねば人は生きる力を失ってしまうが、そこに縛られればまた無限に連鎖する苦しみが待つ。真の自由は遠い。2024/09/21
KDS
5
師の謙翁和尚の死により途方に暮れる宗純は、放浪の末琵琶湖畔の禅興庵を訪れ「禅の鬼」と呼ばれる華叟宋雲禅師の弟子となる。課された公案を解いて華叟から認められた宗純は、道号として「一休」という名を授かることとなった。新参者として兄弟子たちに疎まれ、孤独を深めながらもなお仏道に邁進する一休は、遂に悟りをひらくのだった。争いが頻発し、疫病や飢饉の蔓延する時代。貧富の差は極端なものとなり、それを目の当たりにした一休は派手な籠で通りかかった五山叢林の僧に怒りをぶちまける。これほどじゃないが令和の今も似たようなもんだ。2024/01/20