出版社内容情報
遊歩、アレゴリー、メランコリー…。資本主義をめぐるベンヤミンの歴史哲学は、ボードレールの「現代性(モデルニテ)」の探究に出会う。『パサージュ論』の中で最大の断章項目「ボードレール」のほか、「蒐集家」「室内、痕跡」を収録。(全五冊)
内容説明
遊歩、アレゴリー、メランコリー…。資本主義をめぐるベンヤミンの歴史哲学は、ボードレールの「現代性」の探究に出会う。『パサージュ論』最大の断章項目「ボードレール」ほか、「蒐集家」「室内、痕跡」を収録。(全五冊)
目次
H:蒐集家
J:室内、痕跡
J:ボードレール
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
39
蒐集において決定的なことは、事物が本来の機能から切り離され、同じような事物と、緊密に関係するようになること(17頁)。蒐集家は、たがいに共属しあうものを1つにする(35頁)。Comfortの語源は慰め(傍点)consolationを意味した(75頁)。アメニティも快適さを意味するが、愛が原点だった。類語の概念を広げていきたい。ポルシェはボードレールは生涯、御曹司気質のままだったと指摘(221頁)。想像力(イマジナシオン)は事物同士の内面的かつ密かな関係と、照応と、類似を感知する神的能力(238頁)。2021/10/08
ころこ
38
ボードレール論が占める。『パリの憂鬱』は「孤独な散歩者」、『悪の華』は「冥府」の構想だった。パサージュ論に相応しいが、今さらボードレールかとも思う。とにかく本書は読み易い。ボードレールとポーやユゴーとの比較は興味深く、ベンヤミンのボードレールに対する視線に(直接的には)普遍性は無く、知ではあるが哲学ではない。「ボードレールが後期ラテン文学に感じた親近感は、中世初期に初めて花開いたアレゴリー的なものへの彼の情熱とおそらく関係がある。」アフォリズムでもない断片の積み重ねは、論理とは異なる方法で形式化している。2023/07/28
ターさん
1
本書は「ボードレール」で占められていた。ベンヤミンはこの『パサージュ論』に何故これだけの量の断片を〈蒐集〉したのか。友人によると、ボードレールは突出した存在だったと。西洋文学の連綿と繋がる詩人の中にあって、キリスト教、叙事、田園、農耕、自然…ではない、「悪」の中に「美」を見る。ヴェルレーヌやランボーも及ばない存在感だったのか。パリを「猫のように神経質に音も立てず」[J1a,3]遊歩し、「醜いものに対していつも礼儀正しい」[J10a,3]この機会に『パリの憂愁』と『悪の華』を読むことができたのは収穫だった。2022/04/02