出版社内容情報
ドイツの劇作家,演出家,詩人として知られるブレヒトの代表的な戯曲.ロンドンの警視総監と結んでいる盗賊の首領マクヒィスが,かずかずの冒険ののちに,絞首台に上る代りに爵位と褒賞を授けられるようになったという皮肉なテーマを扱う.クルト・ワイルの音楽によって知られ,映画化されて広く世界の人々に愛されてきた名作.
内容説明
俗臭に満ちた登場人物たちが繰り広げる一大茶番劇。悪党が恩赦によって処刑寸前で唐突に救われるという皮肉たっぷりの結末は、いかにも「叙事的演劇」を唱えたブレヒト(1898‐1956)らしい。劇中に挿入された多数のソングは、クルト・ヴァイルによって作曲され、その魅力と相俟って最もポピュラーな作品となった。新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
325
世に名高い作品だが、もともとは作曲家クルト・ワイルとの共作による、文字通りのオペラだった。戯曲としてはイギリスのジョン・ゲイによる『乞食のオペラ』をブレヒトが改作したものである。ある意味では相当に難解な作品である。それは、登場人物たちが形而上的なセリフを並べるからではない。彼らの語るセリフは、警視総監のブラウン以外、およそ教養からは遠いものだろうし、プロットも実に明瞭だ。にも関わらず、マクヒィスは2度も逮捕され、最後には馬上の使者が現れるのだ。ブレヒト自身の注があるが、それで納得できるというものでもない。2013/08/28
NAO
72
老後の保障だと思っていた娘が盗賊団の首領と結婚したと知るや、その相手を警察に売る父親。警察とツーカーの盗賊団の首領。逮捕された盗賊団の首領が恩赦で釈放と、悪がはびこる様を手厳しくに風刺している。悪がはびこるのは「本当の世界では、救いの神は来ない」とは、なんという痛烈な皮肉だろう。2019/05/26
たつや
43
名作らしいですが、古典的戯曲で、台詞回しは軽快。今でも高校や大学の演劇部で演じられていそうと思う。「一体、人間はなんで生きるんだ」の台詞は好き。2017/06/24
阿呆った(旧・ことうら)
17
[戯曲]作家による戯曲と音楽組み合わせた新しい試みらしい。◆内容は、『水を清くしようとしても、貧乏な魚は棲めない。それよりまず、餌持って来いや!(道徳よりも生活が先)』といったところ。2017/02/19
syota
17
一応19世紀の話だが、ビーチャム商会のシステムを見ると、実際にはカルテルやトラストが横行した20世紀初頭が舞台だと思う。既成の社会秩序や道徳に対する反発や皮肉に満ち、卑猥で活気に溢れている。中でも一番強烈な皮肉は、わざとらしい最後のハッピーエンドだろう。音楽劇の台本として書かれているため、読了後ワイル作曲の音楽をYou Tubeで聴いてみた(ロッテ・レーニャほか)。オペラというよりミュージカルに近い。猥雑で皮肉な歌詞とノルスタジックな旋律の組み合わせがなんとも言えず魅力的で、特に序幕と第1幕はオススメ。2015/03/30