出版社内容情報
死んだ父の緑色の服を仕立直して着ている少年「緑のハインリヒ」は,自分の画才を堅く信じ故郷と母を捨てて修業に出る.見知らぬ都会での数々の経験を通じ,人間の完成へ一歩一歩近づいてゆくハインリヒの姿は,そのまま若き日の作者自身の姿でもあった.スイスのゲーテといわれたケラーの自伝的長編小説.一八七九―八○年.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっきー
14
⭐3 桑原世界近代小説五十選44冊目、自伝的教養小説なのだがしばらく前から読んでいるいくつかの昔の長編小説と出だしが似ている気がしてきた、父親が早くに亡くなり母親と経済的に苦労して暮らしていく、才能はあるがちょっと世間とか周囲と上手くいかないとか2024/02/23
悠
2
スイスのゲーテといわれるケラーの自伝的長篇にして、19世紀教養小説の代表作。緑の服を身にまとい、得意の作り話でさわぎをまきおこしながら、世間の荒波にもまれるハインリヒ君の成長を追うのが本筋だけど、主役そっちのけで脇役に深入りしたりと、書きぶりはいたって奔放だ。商店や学校、教会、森に湖と、めまぐるしい舞台の転換にあわせて、様々な職種や立場の人びとが入り乱れる連作短篇風の構成は、少年期を扱う本巻だけでも、社会全体をとらえようという狙いがうかがえる。まだ4巻中の1巻だというのに、助演女優賞はすでに熾烈な争いだ。2017/03/15
Nemorální lid
0
かのニーチェが評価した、ケラーの自伝的教養小説。読みゆくうちに様々な事を経験して成長していく主人公に対して共感を覚えることが多い。第一巻では幼少期から青年期までを描いているが、濃厚な体験を経て歳を重ねる姿は何処と無く感銘を与える。異性との邂逅、友人との訣別、周囲に対する見栄──これらは今の我々にも共通する所が多々あるのではなかろうか。 情緒溢れるスイスで繰り広げられる主人公「緑のハインリヒ」の人生譚は、今も尚瑞々しさを残す素晴らしい作品であると思う。 残りの3巻にも期待したい。2018/02/08