出版社内容情報
リリー・シェーネマンという銀行家の娘と恋におちたゲーテは,婚約はしたものの,結婚には至らなかった.一方,はかばかしくすすんでいなかったワイマール共和国への招聘がようやく決まり,ゲーテは人生の大きな転機を迎えた.アウグスティヌス,ルソーの『告白』とともに,古来,世界の3大自伝とよばれている.(全4冊完結)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
87
人生で最も愛したリリーでさえ、身内の反対如きに翻弄され慣習や環境に抗えず、諦観してしまったことは残念。自分の人生であるのに。外力の影響から自分の意志を折ってしまった後悔は死際まで苦しめたのだろう。しなかった後悔はした後悔より断然大きいもの。2021/04/29
Kota
12
ついに長篇自伝完結! …が、最終巻でもまだ26歳! 享年82なので、4冊書いてもまだ人生の3分の1程度。この旺盛な執筆意欲は一体どこから? と改めて圧倒される。自伝とはいえ、過去の自分はもはや作品の素材にすぎず、また「自分」とは内面や行動だけでなく、自分と関わった家族、恋人、友人知人、時代、社会、宗教、訪れた土地、触れた芸術、取り巻く自然…それらすべてで成りたっているのだから、自分を描くとはすべてを描くことだ、という意志を全作を通して感じた。途中の「魔神的」も意味深で興味深い。ラストの戯曲のセリフも見事!2019/08/28
てれまこし
6
アウグスティヌス、ルソーと並ぶ三大自伝と言われ、告白という性格を共有する本書であるが、完成された人格として自分史を精神的な成長の過程として振り返るという点で異なる。教養小説になってる。善なる魂をもつものがよきもの、美なるものを求めながらも、さまざまな試練に会う。周囲にもまたそうした試練によってダメにされる者がいる。それが試練を乗り越えた自負をもつ者の目を以て描かれる。この余裕が寛容でありかつ少し突き放したような視点を生む。不完全な人間をも包み込む「自然」へ自己を同一化するかわりに特定の人間には没入しない。2020/12/14
有沢翔治@文芸同人誌配布中
3
『若きウェルテルの悩み』で有名なゲーテがその幼年期から青年期を振り返る。幼少期のいたずら、青年期の交友関係、リスボン地震、ヨーゼフ二世の戴冠式の様子、初恋などの恋愛……。そして、結婚間近だった恋人との破談を経験する。自然と宗教の関係、文学・絵画などの芸術について、当時の市民社会について。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51521738.html2021/11/27
中村禎史
0
ゲーテがワイマールに行ったのはリリーと言う女性との婚約解消の痛手から逃れる為でもあったのですね。 フランス革命直前の当時、貴族に対する彼の意識も面白かった。貴族の暮らし、自分達との懸隔については当然と受け止め、別に貴族をひっくり返してやろう等とは思わず、我が道を行く、と言う感じでした。それが当時は当たり前だったのでしょうね。 いつもこの人の本を読んで思うこと、それはまたいつか十分な知識を持ってからもう一度読みたい、と言うことです。(もう読まないでしょうが)よく分からなかったところがあるからでしょうね。2014/02/03