出版社内容情報
ドイツ近代市民劇を確立したレッシングの代表的喜劇であり,クライストの「こわれがめ」と並ぶドイツ喜劇の傑作である.軍人テルハイムの婚約者ミンナヘの愛情と彼の軍人としての名誉心の板ばさみを,快適なテンポと溌剌たる動きの5幕の中に収め,近代化にとりのこされたドイツ市民の悲哀と苦悩とを,あたたかくユーモラスに描く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
38
【ゲーテの時代1】最初は植物形態学の始祖としてのゲーテに興味を持ち、小説を何冊が読むうちに、この人は一筋縄ではいかないことが分かってきた。彼が長く生きた時代はフランス革命を挟んだ世界史の転換期。政治家(宮廷)時代も含め世界史の現場に居合わせたのだ。そこで自伝と伝記と作品を少しずつ読み進めながら関連本を読んでいきたい。題して「ゲーテの時代」だ。■レッシングはゲーテの一世代前の劇作家・評論家だ。ゲーテは18歳のライプツィヒ大学時代、初演の翌年に本作を観劇している。レッシングは当時のゲーテにとっては雲の上の人↓2020/11/12
じゃがいも
10
やっと読んだ。明るくユーモアがあるが、訳が合わなかったのか途中言葉の上を目がツルツルと滑りまくり。もう一度じっくり読みたいとも思うが次の本を読みたい。2019/05/18
きりぱい
4
戯曲。婚約者を捜しにやってきたけれど、自分たちを泊めるために払いの悪い客が追い出され、その客が当の婚約者であったとは知らず、とドイツっぽくないドタバタの喜劇。すれ違いが笑えるのかと思いきや、意外にすぐ面会。少佐は名誉が大事でメンツにこだわり、令嬢は少佐の心を取り戻そうと策を練り過ぎてやぶへび。好き同士が意地をはって何やってんのよ、という感じ。それぞれの主人のために尽くす従僕のユスト、小間使いのフランツィスカの存在がいい。2015/12/09
uburoi
2
この喜劇は1763年8月22日の朝から始まり、ほぼその日の一日の出来事だ。そして作者レッシングがこの劇を揮毫し始めたのも1763年なのだ。ここには格別の意味がある。この年は7年戦争が終わった年なのだ。主人公の少佐テルハイムは喜劇にふさわしい愉快な人物(滑稽ということではない)だが、傷痍軍人でありさしずめ7年戦争で負傷したのだろう。レッシングはドイツのモリエールたらんとしたということだ。この岩波文庫は解説が50ページもあり時代背景やレッシングの史的な位置づけについて滔々たる文章があるが訳者の若書きらしい。2020/05/10
Nemorální lid
2
『『ミンナ』の喜劇性は、重層的な構造をもっている』(p.198)故が、当著をドイツ戯曲の中でも名作たらしめているのであろう。『価値の転換を見事に遂げる名誉が据えられ、それを遂行することして、ザクセンとプロイセンの敵対関係が利用されている』(p.198)のだ。また、大らかに息づくユーモアとして敷衍するレッシングの軍人に対する皮肉も、モリエールより地に根を下ろした市民性も、疾風怒濤期の頃には歯牙にもかけなかった軽率性や如何わしさを仔細に映し出した繊細さも、一つのリズムとして組み込まれている事も素晴らしい。2018/10/16