角川文庫<br> 葛橋

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角川文庫
葛橋

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  • サイズ 文庫判/ページ数 256p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784041932056
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

それほど俺を憎んでいたのか・・・。男と女の心に潜む官能と亀裂が、深い闇から浮かび上がる。郷愁ゆたかな土俗的風景を舞台に繰り広げられる、傑作中編小説集。

内容説明

東京で、証券会社に勤務する青年・竜介。多忙を極める仕事と、半年前に妻を交通事故でなくした心の傷から逃れるがごとく、郷里、高知の寒村に帰省した。そこで後家の篤子と再会し、次第に心惹かれて行く。向こう岸の山の斜面に建つその家を訪ねるには葛橋を渡らねばならない。古事記の伝説に基づき、黄泉の国とこの世をつなぐといわれる葛。その葛で編まれた吊り橋が竜介にもたらしたものは…。男と女の心に潜む亀裂と官能が、深い闇から浮かび上がる表題作を含む、傑作中編小説集。

著者等紹介

坂東真砂子[バンドウマサコ]
高知県生まれ。奈良女子大学住居学科卒業後、イタリアで建築とデザインを学ぶ。82年、第7回毎日童話新人賞、96年「桜雨」で第3回島清恋愛文学賞、97年「山妣」で第116回直木賞受賞。主な作品に小説「死国」「狗神」「虫」「蛇鏡」「桃色浄土」「屍の声」「旅涯ての地」「道祖土家の猿嫁」「神祭」「13のエロチカ」、エッセイに「身辺怪記」「愛を笑いとばす女たち」などがある。現在、タヒチ在住
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

64
中編三作を収録。果実酒を作る生真面目な主婦、漂流物を拾った漁師の妻、妻に先立たれた夫。それぞれ立場は違えどひたすら鬱々とした心理描写が続き、その湿気の中で何かを切っ掛けに全てが崩れていく。怖いというよりはその濃密な心理描写に当てられて、こちらまで息苦しくなってくる様。個人的に面白く読めたのは、西洋の名作怪談を連想させる「恵比寿」だが、女性の心理描写とそれによって描き出される夫婦間がひたすらに鬱陶しい「一本樒」も実にいい出来。方言と湿気が上手い事粘着きあい、まさに著者独特の世界観を持つ日本のホラーでした。2020/05/09

ジンベエ親分

41
じとーっといやーな空気を漂わせる短編3本。「一本樒」が面白い。というか怖い(笑) やっぱりなー、とか思いながら読んでいると、そこから先が強烈。蛇足なのは百も承知なのだが、そのさらに先を読みたいぞ。「恵比寿」はスーパーナチュラルな要素はなく桜木紫乃とかが書きそうな話なのだけど、皮肉の効かせ方がきっつい。「葛橋」は高知の山村が舞台の坂東眞砂子の独壇場の世界。古事記を引用していて、訳が分からない話ながら、いろいろな深読みができそう。どの話も湿度の高いまとわりつくような空気感が独特の世界観。日本のホラーだなー。2018/02/03

90ac

37
初読み作家。表紙からしてホラーですが、そんなに恐ろしい作品ではありませんでした。中編が3話。暗い森の中で甘い香りを放つ白い花を咲かせる「シキミ」。「鯨の糞」と呼ばれている海から流れ着いた灰色の不気味な物体。黄泉の国とこの世を繋ぐと言われる「カズラ橋」。どれも神仏と関わりのある「物」を旨く使っています。第1話はどちらの夫もつまらん男だと呆れ、妻の般若のような執念を感じます。第2話はブラック・ユーモアのような展開。表題作は古事記と蔓橋と結びつけ、妖しい官能的な恐怖を感じさせられます。2016/01/24

エドワード

25
奥多摩で吊り橋を渡ったことがある。怖いものだ。都会から過疎の故郷へ里帰りした男の物語「葛橋」。妻を失くした男と後家の女。間をつなぐ葛橋、その先は黄泉の国か希望の未来か。「恵比須」は、三世代家族の中で空気のように扱われている主婦が浜辺で偶然拾った<鯨の糞>をめぐる物語。<鯨の糞>が<龍涎香>という高価な香水の原料と知った家族の反応は…塞翁が馬のような話だ。「一本樒」はまさに三面記事小説。またたび酒の妖気にあてられる。樒が毒を持つとは知らなかった。故坂東眞砂子さんにのみ描ける世界。残された作品を読んでいこう。2014/02/11

桜もち 太郎

22
初読みの作家、中編3作品。なに?この安定感は!高知を舞台にした作品だと思うが、「一本櫁」と「葛橋」の吸い込まれるような妖艶さ。「愛憎のもつれは、死を越えて残り続ける」夫に裏切られ、殺された妻の怨念が漂う「一本櫁」。自分の葬儀を部屋の隅から見る情念。「葛橋」の穴蔵でまぐわう男女の幻想。一体竜介は何を見たのだろうか。崩れる葛橋から射精をしながら落ちていく竜介。単なるホラーではなく、生死と性が絡まりながら展開していく物語に作者の力量を感じた。「恵美須」もリアルでよい。人生不公平だから公平との一文が深かった。2024/05/18

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