出版社内容情報
現代アメリカ文学を牽引し、その構図を一変させた稀有の作家による、革新的な批評の書。ウィラ・キャザー『サファイラと奴隷娘』、ポー、トウェイン、ヘミングウェイらの作品を通じて、アメリカ文学史の根底に「白人男性を中心とした思考」があることを明るみに出し、構造を鮮やかに分析すると共に、その限界を指摘する。
内容説明
ハーバード大学での講義から生まれた、人種問題をめぐる革新的な批評の書。キャザーやポー、トウェイン、ヘミングウェイの作品を通じて、アメリカ文学史の根底に「白人男性を中心とした思考」があることを明るみに出し、差別の構造を鮮やかに分析する。
目次
第1章 黒さは重要
第2章 影をロマン化する
第3章 不穏な看護師たちと鮫たちの親切
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
51
ひらがな訳もあるような「青い眼がほしい」の作家が書いたとは思えない硬質のアメリカ文学批評。「人種に関する決まりきった連想」から決別し、例えばヘミングウェイの『持つと持たぬと』の会話の語り手や人称の微妙な選択に彼自身の黒人への人種観が潜んでいることを指摘する。さらに希望と自由に溢れているとされてきたアメリカの暗闇を抱えた白人作家たちが、奴隷制を引き摺り自由を束縛された黒人をなぜ作品に登場させるのか、そこからアメリカにおける白人の精神構造を読み解く。訳者都甲氏のアメリカ精神史の名講義のような解説に助けられる。2023/11/04
セロリ
37
私には難解だった。でも訳者解説を読むと、かなりわかる。そして、モスリンの文章はプロにとっても難しいと知り、少し慰められた。この本を読むと、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)が生み出した人種主義とそれに基づく人種差別は、とても強固で難攻不落に思える。それはアメリカだけじゃなく世界中に蔓延っていると思うし、文学作品がそのプロパガンダに手を貸したとも感じた。ここらで『普遍的な価値観』を問い直してみる必要があるだろう。ヨーロッパの男性知識人の価値観だけを指しているのではないですか?と。2023/10/22
真琴
9
★★★★☆ アメリカ文学にとっつにくさを感じていたのは、カラーの問題への認識不足も原因していたと感じた。本作は私には難解で、解説と本文を行き来しながら読んだ。ちょうど、アメリカの人種問題をテーマにした舞台を見たところでした。日本上演まで四半世紀の時を要し、日本人が白人、黒人、ユダヤ人といった他人種を演じることが課題だったとか。黒人役を黒塗りせず演じていた。(舞台でもミンストレルへの言及があった)。ミュージカル好きは何でも舞台に結びつけてしまいすみません。小説などの内容だけで分かったつもりになるのも危険だな2023/10/08
藤田桜
0
とても参考になりました。2023/10/26