内容説明
「散文詩」と銘打たれたポオ(1809‐1849)最晩年の詩的宇宙論。物理的精神的両面から宇宙を論じて、その本質、その起原、その創造、その現状、その宿命を壮大に謳う。宇宙は「引力」と「斥力」の働きで変化し続け、創造と破壊の過程が永遠に繰り返される―ポオはこのプロセスを「神の心臓の鼓動」と詩的に表現した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おにく
28
この"ユリイカ"は、ポーがボルティモアで謎の死を遂げる前年に発表された作品で、元々は講演で披露した宇宙論をそのまま文章に起こした様な内容です。この宇宙論は"散文詩"と銘打ちフィクションとしながらも、その霊的な概念は、何かキリスト教以外の宗教を思わせます。これを発表したことで、当時の知識人の(特に宗教家の)反発は起こらなかったのか?もしや危険思想の持ち主として、謎の死の切っ掛けに繋がったのではないかと想像が膨らみました。(続く) 2019/04/29
Tonex
25
ポーの壮大で奇怪な宇宙論。詩として評価してくれと書いてあるし、最初の方に人名をもじった駄洒落が頻発するので、夏目漱石の『吾輩は猫である』に出てくる水島寒月の論文「団栗のスタビリチーを論じて併せて天体の運行に及ぶ」や「蛙の目玉の電動作用に対する紫外光線の影響」のようにイグノーベル賞的なお笑い感覚で書いてるのかと思ったら、本人はいたって真面目らしい。ウィキペディアによると、ポー自身はこの著作が重力の発見にも勝る重要な論考だと高言していたとか。しかし今となっては、ポーの研究者やファン以外には用のない本だと思う。2016/02/11
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
19
序文に心を鷲掴みにされた。読書会のお友達からオススメされたのだけれど、これは私の宝物の一冊になるかと。正しく散文詩。この頃量子論はまだ無いよね?あるのかな?命題に対しての疑問。ポオの文章の美しさ。これは理系の研究者が読むとどう感じるのだろう。しばらくユリイカに恋する事にします。物理を学び直して再読したらまた感じるものが変わるのだろうか。数式や公式ってシンプルなのだなぁと思う。美しさの概念ってなんだろう。どちらにも惹かれるのは何故だろう。哲学より数学の方が学びやすい気がしてくる不思議。2018/05/03
ラウリスタ~
8
大真面目に書いた「ドグラ・マグラ」といった印象。宇宙の創生から死、そして再生までを想像して、だらだらと当時の科学知識を書き連ねているようにしか見えない。賛否が大きく分かれる作品だそうだが、価値を0と見ることも容易に出来そうな作品。ところが本人にとっては畢生の傑作であって、しかもヴァレリーも絶賛しているとあれば何かがあるのかもしれない。形式としては、宇宙を主人公とした散文詩といえそう。ただ、内容は今となっては非常に陳腐なものとなってしまっているため当時の衝撃というものは(もしあっても)なかなか分からない。2011/04/28
CCC
7
散文詩ということになっているからか赤帯になっているが、内容は主に宇宙論で青帯のほうがしっくりくる。科学に対抗意識があるわりに話の土台作りは科学に頼っているのが不思議な感じ。しかし科学的と言い切るには曖昧な記述が多い。その曖昧な箇所が将来の科学理論に通じていると読まれる部分を生んでいる気もする。だがそれは仏典に量子力学を見るような次元の話じゃないだろうか。無限についての考えとか面白いと思える箇所はあった。ただ話が観念的じゃなく具体的になればなるほど、科学的簡潔さが欠けているのが気になった。2022/05/03
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