内容説明
英国ロマン派の名文家ド・クインシー(一七八五‐一八五九)の阿片体験にもとづく自伝的告白文学続篇。幼年期の記憶、三人の女性、魔術的な山や破壊された都市の幻想など、その夢の記述はフロイトに先駆け、脳髄を羊皮紙にたとえた一章はデリダの文体論を先取りしている。
目次
第1部(幼少年期の悲痛;重ね書きした羊皮紙写本;レヴァナとわれらの悲しみの貴婦人たち;ブロッケン山の幻影;第一部の終楽章―サヴァンナ=ラ=マール)
第2部
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kouro-hou
29
1821『阿片常用者の告白』の続編。ただしこちらは1845、著者60歳の作で阿片戦争などお薬環境は大分変化している。そして相変わらず著者は阿片どっぷり。で、前から読みたかったこの本、70年代ホラー映画『サスペリア』の元ネタの一つなんですね。原題も"Suspiria de Profundis"なんです。該当部分は全213頁中の14頁だけなんですがw これだけのために前作も読みました。著者の古典希臘知識と阿片パワーが生み出した「悲しみの貴婦人」三人姉妹の話は怪奇幻想哲学的に迫力があって読んだ甲斐がありました。2016/11/09
藤月はな(灯れ松明の火)
29
前作より幻想小説めいた作品。愛すべき姉の死をフェチズム的に語ったり、自分を神話の人物に擬えたりと阿片をやっていても居なくても、お頭は浮かれっぱなしのナルシズム全開の語りに唖然呆然。どうした、ド・クインシー2013/11/25
傘緑
20
「二度再び、私は立ち上がった。そして三度、私は(阿片に)頽れた」前作で威勢のいいことを言っておいてのこの冒頭の自虐ネタなので、読者はずっこけてしまうわけですw「人間の頭脳に埋め込まれた夢見る仕掛け」「狂気の鞦韆戯」「重ね書きした羊皮紙写本」「悲しみの貴婦人たち」「ブロッケン山の幻影」錯綜した迷宮のような文章の中心にあるものが、決別の日の情景が克明に描かれる、幼少期における最愛の姉の死、その原初の楽園喪失への、そして記憶の幻影が揺れ動く夢の中で、シジフォスのように失われた時を追い求めることへの嘆息なのである2016/10/06
春ドーナツ
17
一匹の雌羊が愛に献身するために、突如、自らの本性を断固としてかなぐり捨てるのを見たのだーーそう、雌羊はその自然の本性をさながら脱皮するように、脱ぎ捨てたのだった。仔羊が深い溝に嵌って、人間の助けなしでは到底、そこから逃げることなど絶望だった。そこで雌羊は大胆にも一人の男に向かって進み、騒しくめいめいと鳴いた。男は雌羊の後に付いて行き、彼女の愛する仔羊を救ってやったのである。私の身内に起こった変化も、これに劣らなかった(60頁)目撃談なのか創作なのかは別として、こういう文章をサラッと書いてしまうQが好きだ。2018/12/05
ぜっとん
2
傑作。暗闇を掘り進むような先の見えない文体の最後に出てくるイメージは霧が晴れて光明が射すように豊かで、さらにはそれが今までずっと近くにあったことを思わせるという意味でまさしくこのイメージは光明だった。ブロッケン山の妖魔や上書きされる羊皮紙、幼い姉の遺体のモチーフを語るときと、あの天使のような幼女を語る文体の間にはそう云った関係がある。ユーモリスト・クインシーの姿も健在で、自分のことを大袈裟にお道化て語って見せるのも楽しい。2014/04/19
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- 和書
- まあ、ええやないか