岩波文庫 虚栄の市〈３〉

サッカリー【作】〈Ｔｈａｃｋｅｒａｙ，Ｗｉｌｌｉａｍ Ｍａｋｅｐｅａｃｅ〉/中島 賢二【訳】

岩波書店（2004/01発売）

• サイズ 文庫判／ページ数 446p／高さ 15cm
• 商品コード 9784003222737
• NDC分類 933
• Cコード C0197

出版社内容情報

戦争未亡人アミーリアは息子が生き甲斐の毎日．孫を巡る婚家の画策と見守る亡夫の親友ドビン．一方ベッキーは社交界を泳ぎまわり，大富豪のスタイン侯爵に近づくが…．傑作長篇第3巻は，悪事「露見」の名場面まで．新訳（全4冊）

内容説明

戦争未亡人となったアミーリアは一人息子が生き甲斐の毎日。孫を取り戻そうとする婚家の一方で、母子を見守る亡夫の親友ドビン。対照的にベッキーは社交界を泳ぎ、夫も子供も顧みず、大富豪スタイン侯爵に近づくが…悪事露見の有名な章まで。新訳。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[遥かなる想い]

夫の戦死後、アミーリアは母として生きる。 一方のレベッカは社交界を泳ぎ、スタイン侯爵に近づく…共感ができる人物が ほとんどいない 主人公不在の この作品、 最後は レベッカの悪事露見だが、最終巻 どうまとめ上げるのか？少し楽しみ。

2018/05/09

[ケイ]

手に入れても仕方の無いものを求めるから…とレベッカに説くスタイン侯爵が彼女をアッパレと気に入るのが解せないが、所詮は気紛れ、慰みものということか。手に入れても仕方の無いもの＝虚しいもの＝虚栄の市で手に入るもの。｢足るを知る｣を知らない者は、どこで満足するのか。上へ上へと上っているつもりが、踏みしめているのはいつ崩れるともしれない階段。そして、決して多くを求めず自分の心の愛だけに生きる女も、思い遣りを知らない報いを受けている。ドビンがジャン・バルジャンでありマリウスでもあればいいのになと思いながら最終巻へ。

2017/10/25

[のっち♬]

未亡人になったアミーリアは暮らしに行き詰まり息子を義父に渡す。一方で、レベッカは社交界を着々と上り詰めてゆく。侯爵に接近し、嘘を偽手形のように繰り出しながら。彼女の欺瞞を暴く巻末からの展開はひと盛り上がり見せてくれる。3巻では説教を交えながら登場人物たちのスノビズムも次々炙り出されてゆく。「悔恨の情などというものは、人間の道徳的感情の中では最も弱々しいもの」—懲りることのない上昇志向は物語に突き抜けたような風通しの良さを添えている。しかし、その裏ではレベッカの子供をはじめ温もりのない育成環境も生んでいる。

2018/04/02

[NAO]

ただ口先だけでのし上がっていくベッキーの辛辣さはどうにも好きになれないから、彼女のバブルがはじけたのは自業自得と思うのだけれど、だからといって、貧しさを粛々と受け入れるだけで自分は全く動こうとせず、あまりにも貞淑な妻然として片意地なアミーリアもどんなものかと思ってしまう。結局、人は中庸がいいということなんだろうか。アミーリアと同じタイプでありながらもドビンには心惹かれるのは、彼がきちんと自分の足で立って生活しているからだろう。ドビンには、幸せになってほしいなあ。

2016/12/28

[星落秋風五丈原]

アミーリアは戦争で夫ジョージ・オズボーンを亡くすも一人息子ジョージ―を授かる。オズボーン家では孫息子奪還作戦を計画。母子を優しく見守る夫の親友ドビン。レディ・クローリーことベッキーは社交界の一部の女性達には無視される　そんな状況を夫ロードンは怒っていたがベッキーは「あんただってばくちで沢山すったでしょう」　とつれない。が、一方で兄夫妻と喧嘩しない方がいいわよ、とアドバイス。ベッキーすごく頼りがいあっていい奥様じゃない！でも、この時代、ベッキーのような奥様は出しゃばりなのかな？一方デキる妻に拗ねモードの夫。

2023/12/14