出版社内容情報
朝鮮の近代小説が歩んだ道筋を概観できる短篇選.一九二○年代から四○年代始めまでの短篇から以下の二二篇を収録.笞刑,甘藷,運のよい日,桑の葉,民村,白琴,洛東江,旱鬼,地下村,金講師とT教授,そばの花咲く頃,椿の花,春・春,翼,少年行,五月の薫風,滄浪亭の記,泥濘,留置場で会った男,狩り,巫女図,習作室にて.
内容説明
朝鮮の近代文学は、日本の統治に反対して起こった三・一運動の年―1919年に始まる。上巻には、様々な文芸思潮が流入し、いわゆる傾向文学の時代へとすすむ1920年代~1930年代前半の短篇から、「笞刑」「甘藷」「運のよい日」「桑の葉」「民村」「白琴」「洛東江」「旱鬼」「地下村」「金講師とT教授」の10篇を精選。朝鮮近代文学への概観を与える選集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
51
幻想・プロレタリアート・シュルレアリスム・ダダ・プロパガンダ・ときどき、二葉亭四迷から始まり横光や芥川らに影響を受けた実験的純文……それらの小品群。なぜ私たちはいつでも「朝鮮文学」を見失うのか。在日においては詩歌の分野で金時鐘という巨人、小説に李恢成や梁石日などの作家はいるが、「故国喪失者としての文学」的な側面が強く「ナビゲーター」活動の影は研究家でもない限り希薄である(別にBTSやNijiUのレコメンド作品が爆発的に有名になるのを腐しているわけではなく、感性がぴたりと合うというのは正しく良いことだ)。2023/04/07
蛇の婿
11
韓国において、現代に蘇った過去のテロリストがなぜかわが国の首相を殺す小説が大人気と聞いて、フト韓国・朝鮮のまともな小説を読んでみたくなり購入。読了時現在の韓国の文学の主流は『負け犬小説』であるそうですが、この本に収録された数々の短篇もなかなか読了時に鬱にさせてくれる、どうしょうもない貧困や弱者の立場を描いたものが多いようです。あと巻末の解説が色々な意味でトホホな物になってしまっているのが残念。ネタバレあり間違いありわざと誤解を生む事を意図したのではないかと思える文章あり…まあ、岩波さんですしね…2015/01/27
二人娘の父
7
日本統治時代の朝鮮文学。解説をしっかり読まないと、理解が及ばない点もあるが、新鮮な印象を受ける。一つは凄まじいまでの現実描写。具体的には貧困の描写。もう一つは、抵抗と変革の強い意志。本書は斎藤真理子さんの文章(NHKラジオのハングル講座テキスト連載)で知った。この連載は「解放」後の韓国文学への扉も開かれる。毎回楽しみにしている。ぜひ書籍化をお願いします。2024/03/29
Sachiko
2
戦前、日本の植民地時代の短編小説選。当時の庶民、農民の生活や考えがわかって興味深かかった。いまの韓国の小説とは全く違うが、社会状況を批判的に描いている点ではつながっているのかもしれない。だが、こちらははあきらめのようなものが感じられ、なんとも言えない気持ちになった。ひどい貧困のなか、不当に利益を得ている者への抵抗、家族のために妾として売られていく少女、病気の妻をや故郷に残してきた妻子を思いながらも何もできない夫たちなど、どれも悲惨で光が見えないような人々の生活が描かれている。これが現実だったのかと思った。2024/11/13
やーはつさいと
2
Netflix制作ドラマ『イカゲーム』の最終回のタイトルに引用されている話を読みたくてそこだけ読んだ。 運のいい日 だった気がする。本当にそのまんまの内容で読んで思い出してガチ泣きした。 それしか読んでないからまた読みたいな〜2023/04/23