内容説明
夢とうつつ、過去と現在、そのはざまにたゆたう愛のまぼろし。朦朧とした時空に透明な抒情を結晶させた晩唐・李商隠(八一一‐八五八)。散りばめられた典故、比喩と象徴を駆使した技巧―艶詩を恋愛詩に高めた珠玉の詩篇は、中国古典詩の極みともいうべき複雑な陰翳を燦めかす。
目次
錦瑟
重ねて聖女祠を過ぎる
霜月
異俗二首
蝉
潭州
劉司戸を哭す二首
楽遊
北斉二首
南朝(玄武湖中)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スプーン
36
9世紀の中国の詩人。 歴史と伝説を織り交ぜた詩情豊かな詩集。 千年以上前の詩人の詩が「活きている」事に驚嘆。2020/05/03
崩紫サロメ
22
久し振りの李商隠!艶麗で難解なイメージが強かったけど、荊州に赴いたとき、普通の詩人なら望郷の念をメインに描くのに、李商隠は荊州の風俗の野蛮さを前面に描いている、などあまり意識していなかった面にも気付かされた。あと、川合先生が指摘しておられる通り、李商隠は「無端」を多様するが、「わざと判断を停止して不確かな領域へ投じるためにこの語を愛用」、なるほど!『玉台新詠』からの引用も多く、そのあたり読み直したくなったけど、やっぱり李賀かな(笑)2021/01/19
壱萬参仟縁
8
昨日は春雨であったな。その春雨。白い色が紅桜との色のコントラストが美しい。「新春に悵臥す 白袷衣 白門寥落として 意多く違う 紅桜 雨を隔てて相い望めば冷やかなり」(196頁)。まだ当方の桜前線は音沙汰ないが、今月中旬ぐらいには桜花かも。2013/04/01
内藤銀ねず
6
李商隠は、長い漢詩の歴史の中でも難解なほうに入る詩人。日本の和歌が新古今集で本歌取りの密林に分け入っていったように、中国史の故事をこれでもかというくらいその作品に埋め込み、元ネタが分からないと味読できないようになってます。はっきり言って意地悪。中野孝次『わたしの唐詩選』では「かつては軟派の学生が好んで読んでいた」みたいなことが書かれていましたが、昔の学生さんはほんとに凄いなあ、と思う。入手しやすい本じたいが少なかったのかもしれませんけども。
まつ
5
沢木耕太郎の真似をして、旅に詩集を持っていくことにした。誰のものにしようかと考えていたときに、高橋和巳が李商隠について本を書いていることを知って、即決。書店で注文して手に入れた。 残念なことに、私は詩というものに強く感動したり、入り込んだりということが出来ないのだが、「夜雨寄北」がとても良かった。作者にとって、決して良い境遇のなかで書かれたものではないようだが、私は憧れに近い気持ちで繰り返し読んでいた。もう帰国するので、この本を傍らに置きながら、高橋和巳の書いた評伝を読んでみたい。2018/02/05