内容説明
「いろいろな事が、書けそうで、そのくせ書き出して見ると、何も書けない」(菊池寛「芥川の事ども」)。故郷を去り、大切な人と別れても、思い出は消えない―土地・味・家族や友人、忘れえぬ生活の記憶を鮮やかに蘇らせる三十八篇。
目次
1 錦帯橋流失
2 「老」の微笑
3 ネコロマンチシズム
4 私と酒
5 満腹感
6 父の帽子
7 ほう、ぽんぽん
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
112
岩波文庫で3分冊の随筆集の第三分冊目です。38の随筆が分野別に収められていて楽しめます。昔の随筆でも現代表記にしてくれているので読みやすいです。ふるさとや両親の思い出、酒や食べもの、愛玩動物などについてのほほえましくなる随筆があります。内田百閒、小林秀雄、吉田健一などが私にはフィットします。この3冊の本はなんどか読み返すことになりそうです。2016/06/22
ホシ
10
名だたる文豪の随筆がいっぱい!実にお得な一冊。クスっとさせるもの、ホロリとさせるもの、しんみりとなるもの。色々な随筆は、作家の人となりを浮き彫りにさせて、読者を一時の間、静寂の空間に誘う。随筆の良さを噛みしめられる一冊だった。2017/07/18
やんも
5
表紙は、正岡子規が夏目漱石に送った菊の絵と句。本書収録の漱石の随筆では、あまりこの絵をほめていませんが、それが友人子規の病状を憂う心の裏返しかと思うとちょっと胸にせまります。本書のテーマは故郷・家族・ペットの回想、そして食べ物と酒。岡本一平が妻かの子のことを、与謝野晶子がロダンのことを、と芸術家同士のつながりが見える1冊。解説では日本の文芸になぜ随筆というジャンルが生まれて発展したのかその歴史をまとめているので、そちらもぜひ。2016/10/03
広瀬研究会
3
山之口貘の『暴風への郷愁』を読むと、かつて沖縄の人は初めて雪を見ると『忠臣蔵』を思い出していたことがわかる。「おとうさん」「おかあさん」というのはわりと最近の呼び方で、谷崎潤一郎くらいの年配の人は「おとっつぁん」「おっかさん」と言っていたということは、『おふくろ、お関、春の雪』でわかる。そういう日本人の思い出が記されている。2017/05/05
ますたけ
1
猫と酒が印象に残った。城の崎にては随筆だったのか。2020/03/27