出版社内容情報
年少より鴎外・荷風に傾倒していた著者(一八九四―一九九四)が,芥川竜之介や菊池寛の知遇を得て文学に開眼してゆく経緯を描いた自伝的長編小説.文学修業の途上で自分を啓発してくれた人々をつねに眼中にあって忘れられない人として語る大正文壇史でもある.鈴木三重吉や『赤い鳥』にまつわるエピソードも興味深い. (解説 大河内昭爾)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
58
山川直人の『澄江堂主人』からこの著者の『長篇小説 芥川龍之介』に進み、この『眼中の人』に至った。小島政二郎という人を調べると、永井荷風や松本清張からは嫌われ、今東光からはボロカスに言われている。本書を読むと菊池寛や芥川龍之介に振り回されていて、少年時代にいじめを受けていた話まで書いてあり、相当なバルネラリビティの持ち主なのだと思う。下町出身の江戸っ子なのにチャキチャキした所は乏しい人である。明石家さんまがよく言う「リズム感の悪い黒人もおる」の類いか。本書は面白いのだが、引用文が長過ぎる。そういう所かしら。2019/09/24
U
32
図書館でたまたま背表紙と目が合い、そのまま目が離せなくなって、思わず借りた作品。つまらんかったら読むのやめよう、とりあえず軽い気持ちで…と読み始めたのですが、これが思った以上に面白かった!芥川龍之介や菊池寛とのやりとりは生き生きしたもので、読んでいて楽しかったです。真の自分に徹する事や信念を持って生きる事について改めて考えさせられたし、作者が小説に対する志起点で逞しく生きようとする姿に心打たれました。今まで小島政二郎の存在を知りませんでしたが、文章そのものやそこから伝わる人柄に強く魅了されました。2018/08/11
kei
15
著者の自伝的小説であり大正文壇史でもある。芥川龍之介と知り合いその読書量、知識、すべてに惹かれ、菊池寛には最初反発を覚えるものの自身の中で再評価し交友を深める。どんどん力を伸ばしていく周囲と比較して自身の力量の無さにほとほとがっかりしていた著者が長い時間をかけて自身の考え方を変えて成功していく。代作について読みたかったので手に取りましたが、芥川、菊池との交友や文壇史的内容がとても面白かったです!2019/03/14
冬見
14
手に取ったときは"大正文壇史"の方に興味があったけれど、読んでいくうちに小島政二郎その人に対する興味が湧いていった。次は小説作品の方も読もうと思う。鷗外・荷風に傾倒し、芥川や菊池の知遇を得た作者は、次第に自己の芸術内容を変革して行く。彼らとの出会いはまさに僥倖だった。芥川は終始彼にとって見上げる存在で、彼の眼に映る芥川の姿はなんというか常に格好良い。けれど、彼が最も意識し、影響を受けたのは菊池だろう。ジアールの夜は小島にとって、震災と同じくらい、大きな分岐点になった出来事だろう。彼の眼はそこで開かれた。2019/05/07
シルク
11
学生だった時から鈴木三重吉の助手をつとめていた小島政二郎が、三重吉やら芥川龍之介やらのことを回想したもの。小島はロリコンと言いますか…三重吉ん家に、みつって、13歳の少女が引き取られて暮らしてたのだけど(三重吉の愛人、後2番目の妻の河上らくの妹)、彼女に惚れちゃって、「あの子が成長したら嫁に…❤️」つって、唾つーけたってしてる😰 彼女は三重吉の庇護下にいたもんで、小島は三重吉に「彼女は売約済みに! ゆくゆくは我が嫁!」と、手を回して、そんで、彼女が学校に通う姿を「将来の俺の嫁😍」つって、眺めている…。2025/01/29