出版社内容情報
日本にプロレタリア文学が発展し始めてから今日まで,革命的インテリゲンチャや労働者出身の作家によって数々の優れた作品が生まれた.本書は,潮風と機械油と汗の匂いに染った船乗りがその生活を通じて,初めてゴロツキ仲間から労働階級の自覚に達するまでの成長道程を力強く描いたものである.大正十五年刊. (解説 蔵原惟人)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
65
小林多喜二の「蟹工船」はフィクションだが、こちらは著者の実体験を基にしており、臨場感が違う。石炭運搬船に乗る人々の貧困や危険にまみれた業務。著者が怒りに震えながら筆を走らせている様子が目に浮かぶようである。文学史的にターニングポイントとなった作品であることに間違いはない。2017/02/23
雨衣
12
日本文学の授業にて取り扱った作品。きっちりと読み込めてはいないけれど、雰囲気の悍ましさというか、救われない暗さが凄まじく、印象に残った。まぁ、あんまりじっくり読むとこちらの気分も重く暗くなりそうだったというのがあるかな。時代背景が反映されているという点では当時の先の見えない不安を実感できた気がしたので、流石にプロレタリア文学の代表作として残る威厳のようなものを感じさせられた。2014/06/17
たんそく
8
荒々しい文体の上急に作者の訴えが入ってくるが、常に叙情的な世界観を醸し出している。ただの小説というわけではなく、作者の生の声が聞こえてくるようだ。特に小倉と遊女との会話がロマンチシズムに溢れている。2025/01/12
Kotaro Nagai
6
2020年リクエスト復刊にて入手。大正15年の刊行。旧字旧かなではなく現代表記に改めてあります。室蘭横浜間を往復する石炭運搬船の下級乗組員が過酷な労働環境に対して立ち向かいストライキを起こすまでが綴られます。作者の葉山嘉樹の実際に石炭船に乗り込んでいた体験がベースになっており、当時の乗組員の労働や生活の描写が真に迫っています。独特な比喩表現にユーモアを感じさせる部分もあり読みやすい。ところどころ、検閲によると見られる削除部分と唐突に作者の言い訳が挿入されるのが気になりましたが、読み応えありました。2021/07/27
hwconsa1219
6
プロレタリア文学の先駆けで、あの「蟹工船」にも影響を与えた作品ということで読んでみました。搾取する側と被搾取の側の描写がなんとも。特に被搾取側の労働者の心理描写は、痛々しい位に読者に伝わってくきます。…若干、僻みすぎでは?って思われるくらい。あと、室蘭が舞台となっているのもちょっと嬉しく。2015/12/18