出版社内容情報
寺田寅彦(一八七八―一九三五)の随筆は芸術感覚と科学精神との希有な結合から生まれ,それらがみごとな調和をたもっている.しかも主題が人生であれ自然であれ,その語りくちからはいつも温い人間味が伝わって来る.二十代から最晩年の五十代後半まで書きつがれた数多の随筆から珠玉の百十余篇を選んでこれを五巻に編んだ.
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稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
59
大正11年(1922年)から昭和6年(1931年)に著された21編の随筆が収録されている本書。物理学者らしい随筆(例えば「一つの思考実験」「相対性原理側面観」「言語学における統計的研究法の可能性について」「ルクレチウスと科学」他)の良いが、私のお気に入りは、鋭い観察眼で表現豊かに描写された(「備忘録」の中の小編の)“線香花火”、恰も目の前で線香花火が灯り、儚く消えていく様が、映像としてくっきりと浮かび上がってくるようだ。素晴らしい。2016/10/19
KAZOO
23
寺田寅彦という人物は科学者であると同時に、さまざまなことに好奇心が強い人物だったのでしょう。この第2巻にも科学のことについて触れている文章がありますが、ほとんどが専門外のことについて書かれており、またそれが一流の観察力を持っていることを示してくれています。何度読んでも時間がたつと読みたくなる気にさせてくれる文章が多いので、手の届く場所においています。2014/08/03
Arisaku_0225
13
図書館本。小説はおろか随筆なんて読んでこなかった身としては、随筆は著者の考えや出来事に一喜一憂するだけでなく、その人個人のことを知ることでより深い学びが得られるんだろうなと思った。寺田寅彦が現代によみがえったらなんて言うんだろうか?そんなことを考えながら読んだ。同文庫の1より物理学的な話題が多くちんぷんかんぷんであったものの、「ルクレチウスと科学」では、古典を読むことは無駄では無いことを学べたり、「怪異考」『化物の進化』では民俗学的な要素もあったりと面白く読めた。2023/02/05
unknown
9
化け物と科学の関係について語った『化け物の進化』は定期的に読み返したくなる素晴らしい名随筆。「科学の目的とは実に化け物を探し出すことなのである。この世界がいかに多くの化け物によって満たされているかを教える事である。」「宇宙は永久に怪異に満ちている。あらゆる科学の書物は百鬼夜行絵巻物である。それをひもといてその怪異に戦慄する心持ちがなくなれば、もう科学は死んでしまうのである。」は深く心に響く一文。ロマンがある。2011/11/01
Sakie
8
「子猫」というエッセイをどこかで読み、もっと読みたくなったのだった。雑誌掲載されたエッセイ集。掲載誌も内容も色々である。一編一編が濃く、そのテーマに興味があってもなくてもなかなか読み進まなかった。科学者らしい理屈っぽさと、多岐に渡る好奇心、ちらりと混ぜ込んでくるユーモアにぐっときた。読みたくなったらまた読み返すことにして、えいやっと読了。あなたの指摘したとおり日本人は科学の進歩以外なにも変わっていない、あなたと同じことを相変わらず憂慮していると伝えたい。2014/11/29