出版社内容情報
生きることの哀しさ、愛欲の切なさを、流麗な日本語で描き続けた徳田秋声(1871-1943)。男と女の微妙な葛藤を見詰めて、自然主義文学の擡頭を告げた「新世帯」。物怖じせずに一途に生きていく、一人の女性の半生が瑞々しく辿られる「あらくれ」。今なお新しさに満ちた日本近代文学の高峰・秋声文学の代表作2篇。(解説=佐伯一麦)
内容説明
徳田秋声(1871‐1943)は、生の営みの哀しさ、愛欲の切なさを、流麗にして風韻溢れる日本語により小説とした日本近代文学の高峰。物怖じせずに時代に抗して、一途に生きる女性の半生が瑞々しく辿られる「あらくれ」。男女の微妙な葛藤を見詰めた「新世帯」。現代に新たな魅力を放ち続ける代表作2篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
20
これは明治大正期のウルトラ作品。秋声は私小説ばかりと思っていたがそうではなかった。なにがウルトラかというと、過程を示さずにいきなり急展開するところ。主人公お島の性格の成り立ちも省かれているが、これは実母の性格に似たのと、実母の虐待からくる反抗心と想像できる。驚いたのは、養父がある男と結婚させようとしたが、彼女は嫌がる。しかし、これも彼女の意図とは違いいきなり別の男と結婚することに。こういった気性の荒い、負けず嫌いの女はいつの世でもいる。時代が変わっても人間ってあんまり変わり映えしないのだね。★★★2023/11/21
hasegawa noboru
17
生家の父母、養家先の父母、兄姉やら夫の舅やらの家族近親のしがらみが濃くあって、男尊女卑がごく当たり前であった大正の始まりの頃、苦界に身を沈めることなく、男に囲われる身になることもなく、我(が)を貫いて生きようとする主人公お島の姿は哀切で辛いものがある。<独立(ひとりだち)>をもくろむお島の半生が男遍歴という形になるのはやむをえない。<「手前(てめえ)」とか、「くたばってしまえ」とか、「親不孝」とか、「鬼婆」とか、「子殺し」とかいうようなありたけの暴言が、激しきった二人の無思慮な口から、しきりにほとばしり出2021/12/20
真琴
11
お島という女性が、あらくれた人生を力強く生き抜いた半生が描かれる。男尊女卑の社会の中でここまで家庭や社会に抗う強さはどこからくるのか。あらゆるものへの抵抗心からくる彼女の生きる術か。読みやすい文章ではありませんが、先を読まずにはいられない作品。しかしお島は男運が悪い。2024/02/01
fumikaze
6
著者初読み。映画「あらくれ」を観て、その帰りに図書館で借りる。次々にトラブルが発生してもそれに負けないお島のエネルギーは何処から湧いてくるのだろう。(高峰秀子は当り役かも。上原謙もなかなか良い)。/「新世帯」(1908年)の新吉も働き者。当然ながら嫁を貰うのは働き手(と、跡継ぎ)を得る為ですよね~。私の祖父母はこの時代を生きてきた訳だが、もっと色々話を聞いておきたかった。読み始めると止められない、何か心を惹きつけるものがある。(市川図書館)2024/05/27
真琴
6
(読書会課題本につき再読)幼少期に里子に出されたお島は、あらゆる苦難に立ち向かい一途に生きていく。跳ねっ返りで勝気な印象を受けるがその背中にやるせなさを感じた。映像化、舞台化に適した作品だな、と思ったら、高峰秀子で映画化されていた。2024/05/02
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