出版社内容情報
平家滅亡の哀史を背景として滝口入道・横笛の悲恋を描いた抒情的歴史小説.明治中期における浪漫主義文学を代表する古典であるばかりでなく,その華麗な文章と燃えるような美しい青春の情熱とによって,とこしえに人の心の琴線に触れ,つねに新たなる詩的感激をもって愛誦されるであろう.明治二十七年作. (解説 笹淵友一)
内容説明
平家滅亡の哀史を背景として、滝口入道と横笛の悲恋を描いた抒情的歴史小説。明治中期におけるロマン主義文学を代表する古典であるばかりでなく、その華麗な文章と燃えるような美しい青春の情熱とによって、とこしえに人の心の琴線に触れ、常に新たなる詩的感激をもって愛読・愛誦されるであろう。明治27年作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春ドーナツ
21
沢木耕太郎が「銀河を巡る」で教えてくれた文章法を実践してみよう。「頭の中にあるものを視覚化する(※単語から始めて、それらを結ぶ)。(略)視覚化するまでは本当の意味では頭の中に存在していない(・・・そうすることで)初めて存在していたということが確認できる(略)」手帳には思い付いた単語を書き込んだ。以下、列記する。「樗牛(ちょぎゅう)」「明治27年」「歴史小説ブーム」「大学在学中」「美文調文語体」「平家物語」「横笛(ヒロインの名前)」「入道(仏門に入ること)」「自害」さて。私はこれらを手掛かりにどう書こうか。2019/05/07
零水亭
17
久々の再読です。 人間ドラマもさることながら、第十八章秋の京都、第三十二章春の高野山の描写も秀逸。 二十歳過ぎの帝大生が書いたことに驚きを隠せません。 岩波文庫版は昭和13年第1版発行、戦地に持って行った若者もいたのでしょうか…2023/12/02
クラムボン
17
『平家物語』を題材にした小説。23歳の高山樗牛が東大在学中、読売新聞の公募に入選、連載された。小説は生涯これ1篇だけだとか。 主人公斎藤時頼は平重盛(清盛の嫡男)の配下で、内裏を警護する滝口の武士で剛の者、中宮に仕える舞女横笛に夢中になるのだが…。明治26年の作なので文語体。難しい漢語と仏教用語、装飾過多な文体が慣れない身にはキツい。多少脚色してるようだが、小説としては面白い。平家の本拠地屋島から京の妻子に会いたくて出奔した維盛(重盛の嫡男)が出家した時頼(滝口入道)を高野山に訪れるところが見せ場です。2021/07/19
壱萬参仟縁
14
笹淵友一氏の解説によると、本書は平家物語を典拠にしている(109頁)。本文は読み辛い。誠に難解だが、気になる箇所は音読。描写により情景が目に浮かぶような表現。例えば、「月の光に影暗き、杜の繁みを徹して、微(かすか)に燈の光見ゆるは、げに古りし庵室と覺しく、隣家とても有らざれば、闃(げき)として死せるが如き夜陰の靜けさに、振鈴(しんれい)の響さやかに聞こゆる(略)」(60頁)のように。木曾義仲のことは、平家の人は生きた心地もせず、だからといって敵に向って死ぬ力すらないという(80頁)。驕れる平家久しからず。2014/01/16
零水亭
13
第十八章(第十九章だったかな?)、横笛が斎藤時頼を求めて嵐山をさすらう描写が秀逸。 考えてみれば、まだ天龍寺も嵐電嵐山駅もなかった時代・・・寂しい土地だったのだろうなァ・・・2025/01/29