出版社内容情報
徳川綱吉の側用人から老中にまで上り詰め栄華を極めてゆく柳沢吉保の半生を描いた日記文学.側室正親町町子の典雅な和文が,「元禄の消費文化物語」とも言うべき,将軍の破格な寵愛を受けた吉保の姿とその時代を如実に伝える.
内容説明
徳川綱吉の側用人から老中にまで上り詰め栄華を極めてゆく柳沢吉保の半生を描いた日記文学。『源氏物語』や『栄花物語』を踏まえ、さまざまの典拠を溶かし込んだ側室正親町町子の和文が、「元禄の消費文化物語」とも言うべき、将軍の寵愛を受けた吉保の姿の日々を如実に伝える。
目次
むさし野―前代より元禄三年冬にいたる
たびごろも―元禄四年春より夏にいたる
ふりにしよゝ―元禄四年夏より五年の春にいたる
みのりのまこと―元禄五年夏同七年の春にいたる
千代の春―元禄七年夏より同九年春にいたる
としのくれ―元禄九年春より暮にいたる
春の池―元禄十年春より冬にいたる
法のともしび―元禄十一年春より秋にいたる
わかの浦人―元禄十一年秋より十三年秋にいたる
から衣―元禄十三年秋より同十四年四月にいたる〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
15
脚注のみで本文は難解。口語訳とか意訳が必要に思える。王羲之が出てくる(167頁)。東晋の書家として世界史で学習する人物。法帖(ほふでふ)、「千とせの友」といへる石・・・と書かれている。また、脚注の「世わたり」とは、生計の途で、かれ が(・点) はつかなる世わたりのほども、あはれにめ づ(・) らしうお ぼ(・)す・・・(180頁)とある。・点は濁点とのこと(3頁)。難解でいつか再読。2013/09/16
大臣ぐサン
2
吉田松陰の日記ではない。徳川綱吉に仕えた柳沢吉保の日記。…と見せかけて!その側室正親町町子が柳沢吉保を主人公として平安時代の日記文学風に書いた物。何とも紛らわしい。柳沢吉保ってのは時の権力者で綱吉と一緒にかなり豪奢な暮らしをしたらしい。そのおかげで国庫が空になったんだと。人の金で贅沢しちゃいかんぜよ。解説文が絶妙。本文読む前と読んだ後の2回解説を読むと良い。2012/07/27
山崎 邦規
0
柳沢吉保という、将軍綱吉に重用された人物を中心にして、その妻が書いた日記である。作者の心持ちは平和なので、読む側も穏やかな気持ちでいられる点は秀逸である。庶民の感情とは離れているが、華やかな暮らしの描写はこちらにその味わいを分け与えてくれるかのようである。晩年に至って、隠居するあたりは、さすがに人生の翳りがチラチラするが、誰だろうと栄華が続くものではないだろうから、自分の事のように読んでしまった。やはり最も賛美したい点は、穏やかに話が続きながら、人生の哀歓が確実に起こるところだろう。2023/05/23