出版社内容情報
春水(1790‐1843)は梅暦の発表により名声を博し,自ら人情本の元祖と誇称した.深川の花柳界を舞台として主人公丹次郎を中心に織りなされる深川芸者の恋と意気地――江戸末期の頽廃した情痴の世界を写し出して一派を開いたその作風は,現代の写実的風俗小説の源泉となっている.梅暦物全5部を2冊に分けて収め,興味ある多くの挿絵を付した.
感想・レビュー
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syaori
40
江戸時代後期に江戸で花開いた化政文化。この『梅暦』は、その文化の中心となった市井の人々の生活と恋を描いた人情本の代表作『春色梅児誉美』から始まるシリーズ5編を収めたもの。落剝した丹次郎に見継ぐ深川芸者の米八、仇吉、許嫁お長の三人の恋模様に花魁此糸や女髪結いお由の恋も絡まって、女性陣の引くに引けない恋心と義理と意地が縺れる展開にはらはらしましたが、最後はまさに春色、人情の花咲き誇る大団円でひと安心。深川芸者の意地と見栄がぶつかり合う『辰巳園』は特に読み応えがありました。前日譚となる『恵の花』を挟んで下巻へ。2018/05/02