出版社内容情報
夢のような宣伝文句とともに、事業費10兆円を超すリニア中央新幹線の建設工事が始まった。しかし、その行く手には多くの困難が立ちふさがっている。現場に足を運びつづけるジャーナリストが徹底検証する。
内容説明
東京と関西を一時間で結ぶ超特急、リニア中央新幹線。さまざまな宣伝文句とともに、事業費10兆円を超す巨大事業が動き出した。だが、容易に解決のつかない多くの問題が、工事の前に横たわっている。この超巨大事業は、とてつもない負の遺産となって後世に遺されるかもしれない。リニア問題を追及してきたジャーナリストが、現場に足を運んでつぶさに検証し、7つの課題として整理する。
目次
リニア計画とは?
難問1 膨大な残土
難問2 水涸れ
難問3 住民立ち退き
難問4 乗客の安全確保
難問5 ウラン鉱床
難問6 ずさんなアセスと、住民の反対運動
難問7 難工事と採算性
おわりに―住民・市民の声に耳を傾けられるか
著者等紹介
樫田秀樹[カシダヒデキ]
ジャーナリスト、1959年、北海道生まれ。岩手大学卒業。コンピュータ関連企業勤務を経てフリーのジャーナリストに。取材やNGOスタッフとしての活動でアジア・アフリカ各地に赴く。著書多数。各誌に環境問題、社会問題、市民運動、人物ルポなどを寄稿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
36
品川・名古屋間の86%の246キロがトンネル工事。5680万㎥=東京ドーム50杯分。残土は資源。活用先確定は2割に過ぎない(10頁)。見切り発車、とはこのことだ。車両基地により集落を追われる高齢住民への配慮は必要と思う(28頁)。住み慣れた集落を追われるお年寄りの心情は、いかほどか? また、どれくらいの強さの電磁波を(できたとして)乗客が浴びるのか?(32頁)ハッキリとした説明はJR東海からはない。「影響はありません」。額面通りに受け取るわけにはいかない。2018/03/05
乱読家 護る会支持!
8
「膨大な残土をどうするの」「地下水脈を断ち切り環境破壊」「住民立ち退き」「電磁波の乗客への影響」「ウラン残土の排出」「住民の反対」「難工事、採算性」の七つの理由でリニアモーターカーに反対する、さすが反日の岩波ブックレット。話半分で読まないとね。。。2018/02/27
鯉二郎
6
本書は、JR東海が2027年度に開業を目指し工事を進める中央リニア新幹線に対する7つの疑問をコンパクトにまとめている。自然破壊、残土処理、河川の枯渇、電磁波、ウラン鉱床、建設資金、工期など問題が山積しているが、JR東海は建設予定地の住民が納得できる説明をしていない。著者は東京名古屋間を約40分で結ぶ夢のような計画に対し、悪夢になりかねない可能性があると警告している。超優良企業が社運をかけた大事業のためか、リニアの問題点を取り上げるマスメディアがほとんどいない現状で本書は貴重だ。(2020年5月加筆訂正)2017/10/08
OHモリ
5
●南アルプスを愛する登山者の一人としてリニア新幹線の計画には憂慮していた。というよりは、はっきりと反対の立場だったのだけど、「どうせもう反対しても止めることはできないんだろう」というあきらめの気持ちが優って無力感もあり静観していた。今更だけど岩波ブックレット。 ●漠然とイメージしていた自然環境の破壊だけでなく、「膨大な残土」、「水涸れ」「住民立ち退き」「安全」「ウラン鉱床」「採算性」「ずさんなアセス」など問題点満載のこんな計画が施行されていいわけがい!間に合うなら止めなければと強く思った。2018/04/12
Ryuji
5
★★★☆☆2027年開業予定と発表されているリニア中央新幹線。個人的に、東京~名古屋~大阪が日本の中心の大動脈であることは分かるが、現在の東海道新幹線の他にもう一本の路線を大規模な環境破壊をしてまで作る必要なのかな?とぼんやりとは思っていたが、こんなに色々な問題があるとは思わなかった。この本では7つの問題を提起しているが、特に「水枯れ」の問題は深刻なような気がする、着工してからではもう手遅れになる。あとは「採算性」の問題、人口減少が進む日本でドル箱路線とは言え、2路線の新幹線で採算は取れるのか?2018/03/11