出版社内容情報
国語の統一は,一国の独立の基礎,近代国家には近代国語辞書が要る-「言海」は明治24年,大槻文彦が,玄沢,磐渓と続く一族の学問と,時代の要請を一身に受けて完成させた.その苦節の生涯を描く感動の伝記文学.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コリディ
8
7点。最近始めたスマホゲームと、古い文体で、読み終わるのに相当時間かかってしまった。サンキュータツオさんの「国語辞典の遊び方」で知った、初めての本格的国語辞典を作った大槻文彦さんの伝記。明治維新というのは、偶然と、その当時の人たちの素晴らしい努力とその業績によってなしえた、奇跡の革命だと今更ながら思い知りました。2018/10/22
百花
3
明治の世に、日本最初の国語辞典である「言海」を十七年もの歳月をかけ編纂した大槻文彦の伝記。祖父は洋学者の大槻玄沢、父は医学者の大槻盤渓、学者の家に生まれ、明治という時代の大波の打ち寄せる中で、国語辞典「言海」を完成させるまでの苦節の生涯は崇高な使命感が満ち満ちて、読んでいて頭が下がる一方である。一歳にみたぬ次女、間も無く妻をも相次いで亡くし、失意の中で「露命」という言葉に直面した文彦の心はいかばかりか。今に至るまで多くの知識人を惹きつけてやまない「言海」を読んでみたくなった。2018/11/10
sto65
2
独力で辞書を編むのにいかほどの労力がなのか私には想像もつかない。明治時代の日本人は本当に頭脳明晰で志の高い人がいたのだと改めて感じた。本のタイトルから辞書編纂を中心にしたストーリー展開かと思っていたが、大槻文彦の生涯を通じて彼の半生とその時代がよくわかる、興味深い内容だった。明治維新は士族の反乱が各地で起こるなど血なまぐさい面もあるのだが、国際社会の中で何とか生き延びようとする先人達の苦労には本当に頭がさがる思いがする。大槻文彦も、記憶に止めておくべきその偉人の中の一人であろう。2014/02/23
Koichi Mori
0
国語辞典「言海」を編纂した大槻文彦の伝記。蘭学者だった祖父の大槻玄沢から文彦に至るまで、幕末から明治という時代に翻弄された洋学者達の息遣いが聞こえてくるよう。2012/01/15