出版社内容情報
「はじめまして、だれかさん!」少年はある日、図書館でほこりをかぶる本の間にはさまれていた手紙を見つける。顔も名前も知らないまま文通を重ねるうちに、思いをつのらせるふたり。お互いの日常をつづるなか、ふたりが暮らす「研究所」の不穏な実体が暴かれていくが……。紙のようにもろく燃えやすい心を繊細にえがいた青春書簡小説。
内容説明
ある日、図書室の本にはさまれた手紙を少年は見つける。顔も名前も知らないまま、文通にのめりこむふたり。互いの日常や思いをつづりあうなか、自分たち10代の少年少女が暮らす「研究所」に隠された秘密に気づく。激しい恋と心の葛藤を描いた青春書簡体小説。
著者等紹介
長野徹[ナガノトオル]
山口県生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
65
紙の心・・・どういう意味だろう?と思いながら、ページをめくる。二人の手紙のやり取りで綴られる物語。少しずつ相手のことを、自分のことを探りながら進んでいく。若い、この年頃ならではの空気が感じられる。そのうっち、少しずつ周囲の環境・状況がわかってくるにつれ、思考がひろがる。人の営みの中で積む経験・歴史はどんな意味を持つのか?を考える。その中で、それぞれが存在するのだということ。2022/03/01
はる
64
図書館の本に挟んだ手紙から始まる少年と少女のやりとり。どうやら、ふたりは森の中の特殊な施設で治療を受けている子供らしい。お互いの顔も名前も知らない二人は、すぐに惹かれていく。だが、この施設には秘密があるらしい…。手紙の内容が情熱的過ぎて笑。このへんはさすがイタリア。私はもう少し控えめのほうが良かったなあ。ラストは少しあっさりめだけれど、いろいろな要素が積み込まれていてなかなか面白かったです。この設定で辻村深月さんが描いたとしたら、凄く面白そうだなあ、と思ったり。2020/10/25
星落秋風五丈原
31
全編書簡体で図書館を通じて知り合う名前も知らない男女。家族がいるのに家族とは暮らしておらず、毎日薬をもらい学校に行っている。特殊な病気がまず考えられるが実は全然逆。2020/09/20
柊渚
21
「手紙がきみの頬にそっと触れたらいいな。ぼくの手がきみをなでるように」 図書室の本に手紙を隠し、ひそやかに始まる秘密の文通。顔も名前も知らないまま、互いに惹かれあっていく少年と少女。不穏な空気漂う“研究所”の中で、交わされる二人の密かなやりとりが微笑ましくも切ない。徐々に明らかになっていく“研究所”に隠された秘密や二人の哀しい傷跡。紙のように繊細で柔らかな彼らの心こそ愛おしく思った。2024/02/28
鳩羽
16
図書室の本に挟んであった手紙を発見したことから、ダンとユーナのやりとりは始まった。制限された施設の日常に、小さな秘密は限りなく魅力的に二人を結びつける。ある時、ダンはルームメイトと施設内の冒険に出かけ…。少年少女の初々しい好奇心や羞恥心から恋が芽生えていくあたりはまことにくすぐったく、時々混じる不思議な情報もうっかり見逃してしまいそうになる。手紙のやり取りから伝わってくる彼らの奇妙な生活から、やがて明らかになる施設の正体。若い人が自分の力で乗り越えていくところを、物語の中で追ってみたかった気もする。2020/10/07