内容説明
いつも鉄道にばかり乗っているけれど、たまにはローカルバスに乗って鉄道も通わぬ鄙びた田舎に行ってみるのも悪くないな。―というわけで、2万5千分の一の地図を片手に、〈究極の僻地〉廻りの旅が始まる。分校さえ廃校になるほどの過疎の村、水墨画と見紛うような深山幽谷、熊の出没する秘境…北海道から沖縄まで、23のバスの終点を訪ねた風情満点のユニークな紀行。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっと
6
再読。鉄道のイメージが強い宮脇さんだから、ローカルバスの旅というのはちょっと異色作に見えるけど、むしろ出色の逸品。車窓・車内の描写や、地域や人を見る観察眼など鉄道の旅と変わるところはなく見事というほかない。北海道の「北二号」、栃木の「帝林社宅前」、沖縄の「奥」など、行先の地名からして何もないところだろうに、なぜか旅情をそそられる。車内は通院、通学、買物帰りの老若男女、伸び悩む農林水産業にかわって観光振興にかける役場職員、電話では無愛想でも現地では人懐こい民宿の人など、見慣れた地方の風景にさえ味がある。2013/10/17
churu
4
著者の全盛期。行動力・好奇心ともに旺盛で脂の乗り切った時代の作品。旅の手段が鉄道からバスに移っても面白さは変わらない。むしろ向かう場所は鉄道では決して辿り着けない交通不便な末端僻地。大容量の輸送力を必要としないバス一台で足りるレベルの僻地だ。しかも観光地は端から除外されている。そんな場所に読者は連れて行かれる。金も手間も時間もかかる旅の終点は何もなさげな鄙びた場所。果たして何があるのか? 行った人間にしか見ることのできない古き良き風物に読者は触れることができる。このバス旅紀行はだからこそ最高に贅沢なのだ。2022/09/22
のぞみ
4
「平凡と言ってしまえばたしかに平凡だが、じゃあ、この平凡な集落風景にどこへ行けば出会えるかといえば、いまや、そう簡単ではない。この室谷集落も、やがては水没するのである」…宮脇さんが旅した先は、どこも「何もない」場所。だが今の日本で、『本当に何も無い場所』など、一体幾つあるのだろう。日本中同じ景色になっていやしないか。それは決して豊かなんかじゃない。「あと10年もたてば、この景観に接しられるかどうか疑わしい。行くなら今のうちであろう」宮脇先生は本当に幸運な旅人であろう。2017/07/30
のぞみ
3
「鉄道では行けない山村や漁村へ通じている。川を遡る列車の車窓から支流の合流点を見送る時、バスであの谷へ分け入りたいなと思った」北海道から沖縄まで23の路線に揺られる著者。そこで見たのは、何もなく、何でもない平凡な景色。でもそれこそが本当の豊かさだったのだと、私達は気付くのが遅すぎた。言葉、食べ物、生活様式の多様性こそが真の豊かさであったのに、気付けば日本中、似たような景観ばかり…。「平凡と言ってしまえばたしかに平凡だが、じゃあ、この平凡な集落風景にどこへ行けば出会えるかといえば、いまや、そう簡単ではない」2017/04/14
ターさん
2
宮脇氏といえば鉄道である。しかし、今回はバスである。全国のローカルバスの終点まで乗り、「何もない」場所に旅をする。遠路遥々地の果て(?)まで足を運び、「何もない良さ」を確認する。これは予め分かりきった結論でもある。旅好きなら誰しも理解できるものであろう。我が家の近くには、JRのローカル線が走っている。しかし、バス路線は数年前に運休となった。モータリゼーションは、地方の公共交通機関を確実に淘汰しつつある。個人としても、バス(夜行高速バスは除く)はほとんど乗ることはない。まして、旅行でバスとは思いもつかない。2021/05/27
-
- 和書
- 野良猫の物語