出版社内容情報
Tバック姿であらわれた弁当売りの女性をめぐって町じゅう大騒動になる『Tバック戦争』.日常のふとした出来事を通して子どもたちが感じた人生の機微を描く,初訳の短編集『影』.〔解説・鶴見俊輔〕
内容説明
初訳の短編集『影』―風変りなハンガリー人のおばあさんと親しくなった少年フィリップ、エクアドルの見習い観光ガイドの少女アンパラ、自分が“つかまりやすい人”であると知った少年エイヴリー等、個性的な5人の語り手による小さな5つの話。
著者等紹介
カニグズバーグ,E.L.[カニグズバーグ,E.L.][Konigsburg,E.L.]
1930年、ニューヨーク生まれ。ピッツバーグの大学院で化学を専攻。1967年、はじめて出版した2作品『クローディアの秘密』『魔女ジェニファとわたし』がニューベリー賞を競う。以来、おもに思春期の子どもたちの現実を映し出した意欲作を発表しつづけ、現代アメリカ児童文学を代表する作家として活躍する。1996年『ティーパーティーの謎』で2度目のニューベリー賞を受賞。現在、フロリダ在住
小島希里[コジマキリ]
1959年、東京生れ。翻訳家
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感想・レビュー
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joyjoy
2
どの作品もあとにじわっと残るものがある。心地よく。「それぞれが一つの何かでありながら、しかも同時に三つ合わせて丸ごと一つになれるってことは気分がいいもんだ」、「これは自分の顔だというものを見つけること。十二歳ってちょうどいい年ごろよ」、「頑固な声は、大きい。人を信じている声は、やさしく話していてもきこえるんだ」など心に残る言葉多数。鶴見俊輔氏の解説もよかった。個人の内部にあって自分を支えるパースナル・キー・シムボル(PKS)の話が興味深い。自分にはPKSと呼べるものがあるだろうか?2021/03/01
ちゃーちゃん
2
カニグズバーグの作品は、思春期に家族の亀裂を味わった若者たちへの温かいエールが脈々と流れていると思う。2017/03/19
MJ
1
「自分を情けなく思っていると、なにもかもがベージュとグレーに見えるんだ。人間のこともね。」(老人ホームにて) 主人公フィリップにとって醜い老人の1人に過ぎなかったはずのミス・イロナから激動の歴史と人生を教わる。しかし教わるだけでなく、教えることもある。ミス・イロナはこれまでホームの他の老人たちを退屈で無個性だと決め付けて、自分の話しをしたり、相手の話を聞こうとしなかったと気付いたのだった。語ること・聞くこと・話し合うことの力。世代を超える言葉の大切さを伝える名作。2023/10/24
けいにゃい
1
【YAを楽しむ会】カニグズバーグの短編集、影を読む。どれも題材が面白く、そのどれにも生きていく上で大切な事が含まれているような作品。「つかまりやすい人」が面白かった。2017/07/26
星落秋風五丈原
1
ノーベル賞級の微笑みで、息子の行為を誉めたたえるお母さん(「サメの歯海岸」)。最初、ちょっと親切にされただけで「ありがとう」と言う暮らしが身についていたのに、努力で成功をおさめ、なおかつ驕らず、同業者ともやっていくしたたかさを身につけた母さん(「バートとレイ」)。得意になっていた少年を叱ることなく、さりげない優しさを見せたバスガイド(「織物の村で」)。自分を語る術を見つけ、ベージュかグレーの退屈から抜け出てゆく老人達(「老人ホームにて」)。2005/06/02