出版社内容情報
民話の宝庫といわれるウラル地方を舞台に，さまざまな幻想的人物がくりひろげる物語を，そこに住む人々の哀歓や知恵をおりまぜつつ描く．伝説の石の花をめぐる愛の物語など，8編．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
naoっぴ
76
私が子どもの頃大好きだった話です。孔雀石の美しさに魅せられ、愛する娘カーチャとの結婚も上の空になるほど、最高の石細工を求めた孔雀石の石工ダニーロの物語。読みながらダニーロと同じく孔雀石の虜になり、人の心を惑わす美しさって何だろう、幸せな結婚も欲しくなくなるくらいすごいことってあるのか、読み終わってからもずーっと考えていた子供の頃。今読んでも、孔雀石のもつ繊細な模様、芸術を追求する人の狂気にも似た感情が描かれた美しい物語だと感じます。やっぱり好きだなぁ！2016/10/29
NAO
66
ウラルの銅山の村で生まれた作者が、祖母や村の老人たちから聞いた話をもとにした童話集。前半の５つは銅山の女王と人間の関わりを描いたもの。物語の主人公たちが山の女王と対等に話ができ山の恩恵を受けることができたのは、みな自分の信念を持ち自分の生き方に自信を持っているからだろう。他の３つの作品も、自然の化身が登場する。銅山での仕事が厳しいものだからこそ、こういった自然を化身とした物語が語られるようになったのだろう。2020/01/26
はる
12
図書館本。【勝手にせっせと岩波少年文庫を読む年】子ども向けの「石の花」を読んだころ、山深いところに住んでいた小学生のわたしは、どこかで美しい石に出会わないかと、石をめくったり土をほじったり。もちろん鳥の模様の石は拾えなかった。今なら幸運を手に入れることができたら上手く磨いて光らせることができるだろうか。ダニーロとカーチャのおはなしだけではなかった「石の花」まだまだ読み返しそうな気がする。（スズキコージ挿絵の女王さまちょっとコワい。山で会ったらもっと怖い）2017/04/16
twinsun
4
世界中どこにでもあるような因果応報や足るを知る生活や逃れられぬ運命などの物語要素の他に、農奴制や職人気質、家族愛、ウラル鉱山にまつわる伝統的な採鉱や工芸品の要素が盛り込まれ、数世代もしくは外伝的につながる８つの物語が自分も山中で衣食と労苦を共にしているような時間を過ごすことができた。山の女王や物の怪は実に人間臭く汗や掌のざらついた感触も感じられるようだった。2022/02/24
topo
4
孔雀石、蛇紋石、緑柱石、金剛石…。彼方ウラル山脈の地底でひっそり輝く鉱石たちの放つ幻想的な雰囲気に浸る。自然を、労働を、芸術を愛する者への山の女王からの贈り物。貧しくとも誇り高く、自然と共に生きる人々の姿を描いた民話は気高く美しい。 収録作は『山の女王』『くじゃく石の小箱』『石の花』『山の親方』『細い小枝』『たき火っ子おどりっ子』『水色の子ヘビ』『「青い霧」の井戸』。 美しく切ない『山の女王』『石の花』、 人間の強さを感じる『山の親方』、 自然の化身を身近に感じる 『「青い霧」の井戸』がお気に入り。2020/06/21
