出版社内容情報
13世紀を中心にヨーロッパ各地で建てられたゴシック様式の建築について計画から完成までを具体的に示した本はかつてなかった.美しい大聖堂のできあがるまでを丹念に描いた本書は,各国で高く評価された.
内容説明
ゴシックの大聖堂の計画から完成までを、緻密なペン画で場面を追って克明に描き出し、わかりやすい文章で解説した画期的な絵本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
249
表紙に描かれたカテドラルのファサードの絵を見る限りは、パリのノートルダムを思わせるのだが、これは実はシュトローという架空の街の大聖堂。本書は1252年に建設が決定され、1338年に完成するまでの工程を丁寧なイラスト入りで読者に追体験させようという試み。著者のマコーレイはイギリスのイラストレーターなのだが、訳者の飯田喜四郎はフランスのゴシックを専攻した名高い建築史家。ヨーロッパ各地で我々が眼にするカテドラルは、実に遠大な構想と気の遠くなるような作業の果てに、ようやくあのような姿でそこにあったのである。2013/04/21
ぶち
88
読友さんのレビューを拝見して、とても魅かれた本です。13世紀のヨーロッパ各地で建てられたゴシック様式の大聖堂(カテドラル)が建築されていく過程が緻密なイラストと共に丁寧に説明されています。子供向けの絵本というより、大人向けの読み応えある解説本です。実際にカテドラルを訪れたときに感じた圧倒されるような感覚は、百年という年月と巨費、多大な重労働を費やしてでも完成させた人々の神への想いがダイレクトに伝わってきたのだと、この本を読んであらためて理解できるのです。宗教的なことはほとんど書かれていないのにです。2024/02/04
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
72
主に12~14世紀頃、ヨーロッパ各地で建てられた大聖堂(カテドラル)。時には完成まで何世紀もかかる壮大な建造物です。デビッド・マコーレイ氏のデビュー作にして、コールデコット優秀作を受賞した本作は、精密なペン画で架空のカテドラル「シュトロー大聖堂」ができるまでを描いています。物語では〈わずか〉86年で完成しますが、実際には工事資金の不足や技術的な課題に直面し200年以上を要することが多かったとのこと。無数の人々の汗や想いが積み重ねられた壮麗な建築物には、信仰心は別にしても特別な力が宿っているように思えます。2014/12/07
ネギっ子gen
59
【神に感謝し讃えるため、尊い聖遺物をまつるのに相応しい大聖堂を建てる】たまきらさんのレビューに触発され、書棚片隅より救出――。ゴシックの大聖堂の計画から完成までを、緻密なペン画で場面を追って克明に描き出した、魅惑的な絵本。本書のシュトロー大聖堂は架空の建物で、<ほとんどが中断せず一気に作られたというのは、やや理想的すぎる状態です。工事資金が不足したり、技術上の難問題にぶつかったり、ときにはその両方が同時におこったりして、このような大聖堂を作り上げるには、多くの場合、200年もの長い年月がかかりました>と。2024/01/18
とよぽん
52
大聖堂の重厚さ、美しさ! この本には、荘厳で端正な建築物が完成するまでの細かな工程が丁寧に記されている。奈良の大仏を見たときに、こんな大きな仏像と大仏殿を千年以上も昔の人はどうやって造ったのだろうと思った。それと同じことが大聖堂の建造にも言える。しかも、石やコンクリート、しっくい等を材料に、数十メートルもの高さに積み上げ、石の天井を支える細やかで周到な力学的工夫も素晴らしい。ガラスを作り、色を付け、巨大な窓を飾る。1世紀をかけた人知の総結集。2024/11/01