出版社内容情報
受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語りあう。そんな更生プログラムをもつ男子刑務所がある。埋もれていた自身の傷に、言葉を与えようとする瞬間。償いとは何かを突きつける仲間の一言。取材期間一〇年超、日本で初めて「塀の中」の長期撮影を実現し、繊細なプロセスを見届けた著者がおくる、圧巻のノンフィクション。
内容説明
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、10年超の取材がここに結実。
目次
プロローグ「新しい刑務所」
ある傍観者の物語
感情を見つめる―四人の物語
隠さずに生きたい
暴力を学び落とす
聴かれる体験と証人―サンクチュアリをつくる
いじめという囚われ
性暴力 光のまだ当たらない場所
排除よりも包摂
助けを諦めさせる社会
二つの椅子から見えたもの
被害者と加害者のあいだ
サンクチュアリを手わたす
罰の文化を再考する
エピローグ「嘘つきの少年」のその後
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
43
【人は、ひとりでは罪と向き合えない】 日本初となる刑務所内での長期撮影の結果が、本書と映画という形で結実。その著作版。受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語り合う。そんな更生プログラムをもつ男子刑務所が、島根県浜田町旭町にある。受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」というプログラムを導入している、日本で唯一の刑務所でもある「島根あさひ社会復帰促進センター」。以下は、いつもの。⇒ https://note.com/genok/2022/05/08
遊々亭おさる
26
官民共同で運営されている刑務所・「島根あさひ」では、従来の軍隊式とは異なるアプローチで受刑者の更正をサポートする取り組みが行われている。受刑者同士が本音を語り合い、自身が蓋をしていた心の傷に向き合う場。反省なくして償いは生まれず。彼らが犯罪に至る背景にはいじめや虐待行為が引き起こす負の連鎖がある場合が多い。人は人との関係の中で自らの思考回路が作られる。前科無き我々は、単に運が良かっただけの存在と言えるのかも知れない。犯罪者には厳罰を望む我々の思考。刑務所の改革のみならず社会の在り方そのものが問われている。2022/05/30
Nobuko Hashimoto
21
島根の刑務所内の更生プログラムを数年に渡って取材した映画の監督による本。映画は劇場公開時に見逃してしまったので本だけでもと手に取る。厳しい制約のもと映像化できなかったことも本書では詳細に語られているとのこと。専門家の指導のもと、受刑者どうしが語り合うことで、罪を犯した自らの背景や心象に向き合っていくプログラムは、他者への理解と心からの反省を促す効果が高いように見える。彼らが出所後も互いに支え合っている様子が何よりの証拠ではないか。が、同プログラムは、日本では広がるどころか縮小されている模様。2022/07/17
真琴
16
2008年に「新しい刑務所」として開所された「島根あさひ社会復帰促進センター」で行われているTC(回復共同体)という更生プログラム。それは、受刑者同士が互いの話に耳を傾け本音で話し合いながら罪と向き合う。日本で初めて刑務所内での長期撮影を行った模様が映画化された『プリズン・サークル』(坂上香監督)の書籍版。映画で登場した彼らの「その後」を知れ、罪とは、罰とは、更生とは何か?ということを問いかけてくる。昨年、映画を見ましたがその衝撃が大きく、このように書籍化され冷静に自分自身に向き合えました。 ★★★★★2022/03/29
ズー
14
ブレイディみかこさんの本で、輪になって受刑者同士が話し合うということがあることを知り、興味を持ち読んでみた。犯罪者のほとんどが何かしらの暴力を受けていて、そもそも思いやりや感情などが育っていなかったり、麻痺していたりする。なんでこうなったのかは、辛い過去に目を向けて、それらを言葉にし、理解するからこそ、本当に反省をするし、再犯防止にもなる。やみくもに罰を与え、人権を剥奪しても解決にはならないということがよくわかった。2022/07/06