出版社内容情報
自由意志に対する懐疑論にどう応答できるか? 現代自由論・責任論の錯綜した論争状況を網羅的に整理する
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
evifrei
16
自由意思論について、様々な学説をなぞりながら網羅的な議論を試みるスリリングな一冊。頁数こそ薄いが、内容の厚さは確かな書籍になっている。2章の『道徳的責任』と、リバタリアンと自由意思論について述べた5章の『自由意思の諸理論』が特に面白い。所々難易度の高い議論もあり一見自由意思論について初めて読むには不向きに見えるが、一ノ瀬解説が非常に解りやすく一ノ瀬解説だけでも一読の価値あるものに仕上がっている。全く自由意思論についての議論が未知だという方はこの解説から先に読んでも良いかも知れない。これはかなりの良書だ。2020/03/14
テツ
12
『自由意志』が尊ばれ、大の大人ならば自ら意思決定を下すべきだと大抵の人間が感じているであろう『自由』を大切にする現代社会。ただその『自由意志』について真から思考し、突き詰めて考えてみるということをどれだけの人間が行っているのか。ぼくたちが気軽に気楽に口にする『自由意志』って、とても一筋縄ではいかないくらいに哲学的に入り組んだ概念であるということ。どれだけ考えてもこの手には掴めず、靄の向こうに消えていくような不確かなものを何故か絶対に尊ぶべきだと多くの人間が考えている不思議さ。いつから自分が自由だと思った?2022/08/17
shin_ash
5
自由意志と言うのは大切だと信じている。そう言う自由意志とは哲学的にどうなのか?何か理解が深まって見通しが良くなるかと期待して読んで見た。ところが結果は真逆で、あれだけハッキリ自由意志があると思っていたが、自由意志とは想像以上に不安定な概念である事がわかった。この何かわかるようなわからない様なモヤモヤ感は、解説によると「自由意志が筋金入りの哲学の難問」で、難問が難問であるモヤモヤした様子を味わうことこそが哲学の醍醐味とのこと。なるほど。そうであるなら、このモヤモヤは哲学の醍醐味なんだろう。そう思うと納得だ。2020/09/24
すずき
0
正直難しかった。各章ごとの関係がどうなっていて、議論がどう繋がってるのか一読では理解できなかったが、最初と最後の章が概観的な内容になっているとは思う。 多くの分野に当てはまることだとは思うが、自由意志単体で抜き出して議論の妥当性を検証することはできず、最終的には認識論、因果性に関わる形而上学、ここの論証に不確実性が残る場合の判断についてメタ哲学的な論点など総合的な見当が必要らしいことはわかった。難し〜。2019/11/27