出版社内容情報
国家が「愛国」の対象となったのは歴史的偶然にすぎず,人は国を愛さないこともできる.愛の対象の実相を追って,キケロ,アウグスティヌス,ヴェイユ,ミュラー,福沢諭吉,清水幾太郎など古典古代から現代までの多様な愛国論を渉猟し,愛国の構造を追究した野心作.無自覚な国家信仰を掘り崩すために.
内容説明
今日、世界中で「愛国」=パトリオティズムが復活を遂げている。しかし、愛国ほど政治的に利用されやすく、胡散臭さのつきまとう概念はない。キケロ、アウグスティヌス、ヴェイユ、マッキンタイア、ヴィローリ、ハーバーマス、ミュラー、福沢諭吉、清水幾太郎など、欧米と日本の多様な愛国論を批判的に検討し、愛国の歴史的・哲学的な構造を解明。国家への偶像崇拝の論理を暴く。
目次
序章 愛国という問題
第1章 愛国の系譜
第2章 愛国の対象
第3章 愛国的であるということ
第4章 愛国的である理由
第5章 愛国的ではないということ
終章 愛国の彼方へ
著者等紹介
将基面貴巳[ショウギメンタカシ]
1967年生。オタゴ大学人文学部歴史学教授。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、シェフィールド大学大学院歴史学博士課程修了(Ph.D.)。ケンブリッジ大学クレア・ホール・リサーチフェロー、オタゴ大学人文学部歴史学准教授などを経て現職。専攻は政治思想史。著書に『ヨーロッパ政治思想の誕生』(名古屋大学出版会、2013年、第35回サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Zensohya
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現代パトリオティズム論は、国家による聖性の独占を暗黙の前提とするために、偶像崇拝の論理を内包している。国家はそれに帰属する諸個人のアイデンティティを管理する機構でもあるため、個人のアイデンティティは国家に由来する聖性を帯びる。歴史的には、初期近代において教会から国家へ聖性が移転され、18世紀以降、パトリオティズムの基礎をなすアイデンティティ、とりわけナショナル・アイデンティティは聖性を帯びるようになった。現代パトリオティズム論は、国家に対する偶像崇拝の手段としてパトリオティズムが機能するのを許してしまう。2021/09/26