出版社内容情報
クローチェとその批判的継承者たちが見たファシズムの本質とは何だったのか。思想的格闘を追う。
内容説明
20世紀に出現した怪物、ファシズム。発祥の地イタリアで、思想家クローチェと、その批判的継承者であるヴォルペ、グラムシ、デ・マルティーノらは、怪物の正体の解明と克服に挑む。近代の必然的帰結か、頽廃か。歴史を動かすのは誰か、「自由」の理念はいかに守られるのか。彼らの思想的格闘の軌跡を追う。
目次
序章 ファシズム下の思想家たち
第1章 ファシズム・イデオロギーの成立(一九二八‐三一年)
第2章 ヴォルペ―中間層の歴史(一九二八‐四九年)
第3章 晩年のクローチェ(一)―「詩」と「文学」(一九三三‐四一年)
第4章 獄中期グラムシ(一)―従属階級の歴史へ(一九二九‐三二年)
第5章 獄中期グラムシ(二)―従属階級の歴史へ(一九三二‐三五年)
第6章 晩年のクローチェ(二)―「生命性」と「文明」(一九四一‐五二年)
第7章 晩年のデ・マルティーノ―民俗学的歴史へ(一九四九‐六五年)
終章 近代社会における自由と信仰―ファシズムをめぐって
著者等紹介
倉科岳志[クラシナタケシ]
1975年生まれ。イタリア政府奨学生、イタリア歴史学研究所奨学生としてナポリに留学。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。現在、京都産業大学文化学部准教授。専門は近現代イタリア思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
8
クローチェに関心をもって読んだが自分の手に余った。順序としては同じ著者の『クローチェ』を読んでから読むべきだったらしい。自由の精神哲学を構築することによってファシズムに抗したクローチェであるが、彼の描くイタリア史は指導階級による高級文化の歴史。ヴォルペ、グラムシ、デ・マルティーノは、ファシズムに接近した者もいるし抵抗した者もいるが、いずれもこの欠点を批判し補填しようとした。このデ・マルティーノという人が興味深くて、クローチェとグラムシの影響を受けて、イタリア民衆の歴史を掘り起こすために民俗学に向かった。2022/07/26
瀬希瑞 世季子
2
デ・マルティーノは、クローチェやグラムシの問題意識を引き受け、ファシズム病気論とも触れ合う課題に取り組んだ。すなわち、世俗化した近代人が陥る存在の危機から回避させてくれるものは何かという問いがそれである。20世紀のイタリア社会は不幸なことに、この問いに対してファシズムという形で答えた。デ・マルティーノはその反省に立ちながら、世俗化した社会においてもなお、消し去ることのできない近代人の信仰の行方を探求し続けた。2025/02/24
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