内容説明
冷戦の終結と新自由主義の席捲によって、歴史への関心と想像力が干上がってしまった日本社会。本書は、この状況に危機感を抱いた日米両国の研究者たちが、一九八〇年代以降の日本社会の深層をさまざまな角度と時間幅で「思想史する」こによって、未来への想像力を取り戻そうとする試みである。
目次
個人と協同
「新しい人」の政治の探究のために―水俣から学ぶこと
近代日本における「責任」の変移
親密性をめぐるせめぎあい―政治経済の構造変革と家族/ジェンダー
「構造改革」の思想
「失われた」四〇年―戦後労働の精神史
季節はずれのはかない幽霊―戦後日本における第二の昭和維新
著者等紹介
グラック,キャロル[グラック,キャロル] [Gluck,Carol]
コロンビア大学教授
五十嵐暁郎[イガラシアキオ]
立教大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
34
福沢諭吉は、経済的自立による個人主義の必要を提唱した人物だが、伝統的協同体の結びつきがあったともいう。諭吉さんの母は、誠実さと信用を重んじる高潔な女性(14頁)。ハーバーマスは、18C市民革命前夜に、市民が芸術・政治談議の中に、市民的公共性を見出した。19Cに国民国家の権力が増大、行政的公共性が拡大、市民的公共性が縮減する公共性の構造転換が起きたという。近大を通じ、私的、遅れ、地域エゴの根源的生の可能性をもう一つの公共性へ解き放つ、公共性の逆-構造転換を導いたという(58頁~)。2016/11/18
funuu
11
日本の思想をさぐりあてようと言う試み。2005年に書かれた。まだ日本が力があった時代。現状はピークから下落相場な国。明治維新の天皇制度国家が偶然あるいは幸運にも続いているのだろう。我が同胞は敏感にして激昂しやすく、軽佻浮薄にして堅志高情なし。自由民権を主張すると思えばたちまちに全体主義を謳歌し、一敗地に塗れれば更に民主主義に転換し、昨日は米人を鬼畜と罵り今日は恩人と崇めるが如きはその一例だ。『卒翁夜話』2019/10/26
マウンテンゴリラ
2
この類いの本を読んでいつも思うことは、やはり日本には思想というものは根付きにくいということであろうか。思想というものが、専門家によって担われ、庶民とは隔絶したものであるという認識が染み付いており、それが戦後の社会に如実に反映されてきたということも言えるような気がする。第二次世界大戦後、世界的に経済が発展し、特化し、集約し、先鋭化することにアドバンテージを発揮することが容易な技術の分野を無批判に発展させてきた。今や世界史的な汚点とも見られる、水俣病をはじめとした公害問題も、あたかも、→(2)
-
- 和書
- 「アイドルの国」の性暴力