内容説明
二〇一〇年代に入り、大学進学率は五〇%を超えた。基礎学力が不足している学生に対する教育の困難さが浮上し、大学が多すぎるという批判も噴出。また、拡大を続けてきた大学院教育のゆくえにも注目が集まる。そして大学の大衆化と労働市場の関係は?多様化と序列化が進む大学の未来を展望する。
目次
序論 大衆化する大学にどう向き合うべきか
1 大学大衆化への過程―戦後日本における量的拡大と学生層の変容
2 多様化する学生と大学教育
3 マージナル大学における教学改革の可能性
4 拡大する大学院と就職難民問題―大学院修了者は「使えない人材」なのか
5 日本の大卒労働市場と格差社会の再検討
6 高等教育システムの階層性―ニッポンの大学の謎
著者等紹介
広田照幸[ヒロタテルユキ]
1959年生まれ。日本大学文理学部教授。教育社会学
吉田文[ヨシダアヤ]
1957年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。教育社会学
小林傳司[コバヤシタダシ]
1954年生まれ。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。科学技術論、科学哲学
上山隆大[ウエヤマタカヒロ]
1958年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授。科学技術政策
濱中淳子[ハマナカジュンコ]
1974年生まれ。独立行政法人大学入試センター研究開発部准教授。教育社会学、高等教育論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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生魚
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濱中さんによると、企業は、自らが採用しているやり方を一から改善しようとする学生ではなく、何かを付け加えるかたちで改善しようとする学生を好む。そのやり方を採用しているのには理由があるからである。しかし、批判力に長けた大学院卒業者は、そのやり方を批判的にとらえるあまり、企業にとって受け容れにくいこともある。ただ、研究で先行研究を検討する際には、その研究がなされた理由を理解することが求められ、それは、企業があるやり方を採用している理由を理解することにもつながる。なるほどなぁとも、そりゃそうだよなぁとも、思った2014/04/08
Toshiyuki S.
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変動する社会における大学のあり方を問うために編まれたシリーズ。現在、この2巻まで刊行されている。大学の大衆(マス)化についてはトロウの有名な議論があるが、本書のデータが示す“大衆化”の実像は必ずしもトロウの指摘と合致しない。入学者の学力や経済的基盤については、反常識とも言えるような証拠が提出されていて、とても興味深い。本書の論文は全般的に教育と社会とのつながりを強く意識して書かれている。入試やカリキュラムの改定に終始しがちな教育改革の政策論議に対し批判を投げかけることに、ある程度成功していると思う。2013/06/12