内容説明
近代化論批判から社会史の評価、現代歴史学の課題の展望まで、初めて体系的に提示される著者の戦後史学史論。
目次
1 戦後知としての歴史学(戦後知の変貌;黒田俊雄の中世宗教史研究―顕密体制論と親鸞;色川大吉と戦後歴史学―「民衆史」の構想力;回顧と自問;歴史意識の黄昏?)
2 方法意識とイデオロギー(日本の近代化についての帝国主義的歴史観;(書評)坂田吉雄編『明治維新史の問題点』
日本マルクス主義と歴史学
方法規定としての思想史
前近代の民衆像
民衆史の課題について―井上幸治『近代史像の模索』・林英夫『絶望的近代の民衆像』を読む)
3 社会史の時代(「脱構築」の時代;「全体史」のゆくえ;阿部社会史、原点への回顧―阿部謹也『北の街にて』解説;比較への意志―阿部謹也『ヨーロッパを見る視角』解説)
4 現代歴史学の課題を求めて(語りえぬことを語ることについて;丸山思想史学、遠望する灯火;社会学部の学問を振り返って;遅塚さんと二宮さん)
著者等紹介
安丸良夫[ヤスマルヨシオ]
1934年生。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。一橋大学名誉教授。日本思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
28
山内氏を引き合いに出し、文化とは、様々の記号を介して混沌をみずからのシステム内にとり入れようとするもの。一方、混沌を排除しつつも、文化の全体性の不可欠の部分として、人を保持(『文化と両義性』岩波書店、1975年の本、本書では26頁)。自分史は自分を世界との関係で問いなおすという主題のための恰好の手がかりで、職人としての史家(93頁)。民衆史と社会史(98頁~):色川大吉の民衆思想史は70年代後半から民衆史と呼ばれることが多くなった。2015/11/04
Toska
6
日本における戦後歴史学のみならず、知識人の精神史について知見が得られる。確実な死を運命づけられていた戦争からの解放感。戦前以来の教養主義と啓蒙的メンタリティ。圧倒的な存在感を持つマルクス主義。その対抗軸として高度経済成長期に台頭した近代化論。これら起伏に富んだ精神の営みを「左巻き」などと粗雑なレッテル貼りで片付けようとする一部の人々は、恐ろしくもったいないことをしているのだと思う。2022/11/10