出版社内容情報
社会・経済・政治システムがグローバル化した現在,近代国民国家の枠組みで考えられてきた「市民権」概念が揺らいでいる.欧州に生まれた「市民権」概念を,「自由主義」と「市民共和主義」という2つの伝統から説明し,現代の多文化社会に対応した新しい「多重市民権」(「並
内容説明
社会・経済・政治のシステムがグローバル化した現在、近代国民国家の枠組みで考えられてきた「市民権」概念が揺らいでいる。本書では、欧州に生まれた「市民権」概念を、「自由主義」と「市民共和主義」という二つの伝統から説明し、現代の多文化社会に対応した新しい「並列的な多重市民権」や「世界市民権」という考え方を紹介する。移民・難民・定住外国人について議論を進める際にも大きな示唆を与える書である。
目次
第1章 自由主義的市民権の伝統(起源;市民権と資本主義;マーシャルの市民権論;マーシャルの市民権論の影響力と評価;社会的市民権と新自由主義;二つの考慮すべき要素;世紀転換期の市民権;諸権利の現実と問題点)
第2章 市民共和主義的市民権の伝統(主要な思想家たち;市民権の目的;共和主義的市民権の概要;市民権の特質;市民の役割;市民の形成;共和主義的市民権の復活と議論;共和主義的市民権とその現代化)
第3章 誰が市民か(法律による市民の定義;平等か、エリート主義か;フェミニストの視点からみた市民権;国籍としての市民権の起源;市民権と国籍の融合;国民としての市民―地縁か血縁か;多文化主義)
第4章 多重市民権(多重市民権という考え方;並列型市民権;連邦制度と市民権;EU(欧州連合)
国家内市民権
コスモポリスの考え方
世界市民アイデンティティとその道徳性
世界法と市民
世界統治と市民
多重市民権―賛成論と反対論)
第5章 問題と解決(市民権概念のもつ内在的な問題と矛盾;現在の諸問題;教育の役割;二つの伝統の関係と市民権の本質)
著者等紹介
ヒーター,デレック[ヒーター,デレック][Heater,Derek]
1931年生まれ。Brighton College of Educationの歴史学科長、Brighton Polytechnicの社会文化学部長、英国政治学会初代会長を務める
田中俊郎[タナカトシロウ]
1946年生まれ。71年慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。現在慶應義塾大学名誉教授、ジャン・モネ・チェア。専攻は国際政治論、EU政治論
関根政美[セキネマサミ]
1951年生まれ。79年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。現在同大学法学部教授、社会学博士。日本学術会議連携会員。専攻はオーストラリア現代社会論、国際社会学、社会変動論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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