出版社内容情報
戦後,社会科学新生のなかで歴史家となった著者は,戦後歴史学の理論的達成を受けとめつつも,やがて〈人間が具体的に生きている世界〉の探究へと進み始める.後年の「社会史」提唱へとつながる,そうした「問題観の転換」のきっかけとなった長篇仏語論文(全訳)をはじめ,農村史・宗教戦争・絶対王政に関する著者前半期の論考を収録.
内容説明
後年の「社会史」へとつながる問題観転換のきっかけとなった長篇仏語論文(全訳)、自己経験をふまえつつ現代歴史学の歩みを論じた「戦後歴史学と社会史」などの論考を収載する。
目次
序 戦後歴史学と社会史
1 戦後歴史学と近世史研究(フランス絶対王政の社会;一六世紀フランスの小作経営について;領主制の「危機」と半封建的土地所有の形成 ほか)
2 土地から村、村から村人へ(一七・一八世紀における農村生活の一実態―フルーリ=アン=ビエールの領主領)
3 構造史と変動史(フランス絶対王政の領域的・人口的基礎;一七世紀フランスにおける土地所有と経営;転形期の社会と経済)
感想・レビュー
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cocoro vagabonda
1
二宮宏之氏の初期の論考を集めた論集。社会史の旗手として著者を知った私には意外なくらい(しかし、時代背景を考えれば当然のこととして)二宮氏が戦後史学に首根っこまで浸かり、けれども戦後史学的な思考様式では何も解明しないともがき、留学先のフランスで社会史と出会う時期までを扱っている。後年に書かれた「戦後歴史学と社会史」の明晰な見取り図は、氏の戦後史学との深い関わりなしには書けないのだと思い知らされる。戦後史学の軛を負って書かれた諸論考にも、近世の権力構造について示唆に富む記述があり、学ぶところが多い。2012/06/27