内容説明
凡庸な夫への失望と道ならぬ恋の煌めき。襲いかかる策謀と絶望のうちの自死。ギュスターヴ・フローベール(一八二一‐八〇年)の労作『ボヴァリー夫人』(一八五七年)は、新しい時代における個人生活の悲喜劇を冷徹な筆致で描いた「近代写実主義の傑作」と評されてきた。だが、残された厖大な草稿は、はてしなき「書く」営みの渦中で作家が言葉に定着させようとしたものの正体を記録している。民主主義と資本主義に司られた近代国家と、そこに生きる人々の「世論」が形成する磁場。『ボヴァリー夫人』が描く人物の彷徨は、個人をはるかに超えたその磁場に今も生きるわれわれ自身の姿にほかならない―幾多の草稿と取り組んできた生成研究の第一人者による精緻にして斬新な「読む」営みのただなかに、未知の作品像が立ち上がる。
目次
第1章 『ボヴァリー夫人』の誕生
第2章 恋愛の政治学―「自由」と「平等」をめぐる民主主義的情念
第3章 ベルトーの挿話―結婚・世論・金銭
第4章 エロイーズの死からルルーの策謀へ
第5章 オメとは何者か―名誉欲の行方と「世論」の支配
第6章 イロニーの力
著者等紹介
松沢和宏[マツザワカズヒロ]
1953年、東京都生まれ。1988年、パリ第8大学フランス文学科博士課程修了(文学博士)。現在、名古屋大学大学院文学研究科教授。フランス国立科学研究センター近代テクスト草稿研究所フローベール班日本側通信員。主な著作に、『ギュスターヴ・フローベール『感情教育』草稿の生成批評研究序説』(フランス語著作)(フランス図書、1992年)(渋沢・クローデル賞本賞)、『生成論の探究―テクスト・草稿・エクリチュール』(名古屋大学出版会、2003年)(宮沢賢治賞奨励賞)ほか
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