内容説明
ナポレオンはフランス革命の継承者だったのか、それとも破壊者だったのか。大帝国の名のもとに行われた彼の支配は、ヨーロッパのそれぞれの地域に何を遺産として残したのか。ナポレオンが目指し、成し遂げ、断念したものは、彼が築き上げた帝国の実態にこそ表れている。近年目覚ましい展開を見せる新たなナポレオン研究の成果を見渡し、行政組織、法制度、軍事、経済、教会と国家、帝国エリートの編成、従属国支配など、主要なテーマに沿って、ナポレオン体制の現実を総合的に解説した得がたい一冊。
目次
第1章 序論―歴史書のなかのナポレオン
第2章 受け継いだ遺産
第3章 文官組織―ナポレオン国家の非軍事基盤
第4章 「大帝国」と「大陸軍」
第5章 帝国エリートの編成と贈与
第6章 帝国の経済
第7章 遺産
著者等紹介
エリス,ジェフリー[エリス,ジェフリー][Ellis,Geoffrey]
オックスフォード大学ハートフォード・カレッジ・フェロー。フランス近代史(社会史・文化史)
杉本淑彦[スギモトヨシヒコ]
1955年生まれ。フランス近現代史。現在、京都大学大学院文学研究科教授
中山俊[ナカヤマシュン]
1979年生まれ。フランス近現代史。現在、京都大学大学院文学研究科博士後期課程在籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
5
ナポレオン帝政期の統治についての概説書。「入門」とシリーズ名にはあるがかなり骨太な内容。興味深い部分としてナポレオンは従属国に対して、革命精神に謳われるような対等の同盟者としてではなく収奪者として振る舞い、自らの利益維持のために封建制をむしろ強化する側に回ったことがある。最後に著者も指摘しているが、ナポレオンはあくまで当時の軍隊教育を受けた兵士であり、常に戦時下であった国を率いた統治者であることを考慮しないと、批判するにしても称賛するにしても、その実態を見誤るのだろう。2018/03/06
min
1
フランス学の諸本がかなり多く比較されていて調べ物には使えるかもしれません。ただしまったくの入門としてはどうかと…諸本をよんでいるといいかも2009/03/02
中村禎史
0
ナポレオンのフランス、及び従属国とした独伊などにおける軍事、統治組織、経済政策、教会政策などを概説する。ナポレオンによって独などの近代化が進んだとする従来の説は、史実の一面しか捉えておらず、独伊で得た地代収入を自国の軍事功労者や親類に配分するなど、中世的な側面もあったとしている。独伊と違って露西に対しては支配力を及ぼせなかったこと、ナポレオン自身が部下の人事評定を行ったこと、戦術面で部下に任せることが出来なかったことなど、興味深かった。ナポレオン時代の戦役で男女の比率が崩れたこと等も面白かった。2015/08/08
まも
0
ビルゲイツが幼き頃にナポレオンの伝記を読んで感銘を受けたと聞いて手に取る。伝記というよりは、ナポレオン史観の再評価と言った内容。封権制を改革するための資金を得るためには、古い価値観を残さざる終えなかったなど、実際はすんなりと改革できたわけでなく、ナポレオン封権制度ともいえるような状態だったりなかったり?入門書としては辛い。2013/03/14
wang
0
ナポレオンの政権を支えた下部構造。公務員、軍人、新貴族名士層や経済、土地政策など。また彼が残した遺産について民法典、憲兵隊など。短期間に頂点に上り詰め欧州に影響力を残したナポレオンがそこで作り上げたものの概説。2011/12/02