内容説明
一七九八年にジェンナーが発表し瞬く間に世界にひろがった牛痘種痘。しかし「鎖国」政策下の日本への導入には五〇年の歳月を要した。最新技術を日本に伝え、広めようとする苦闘のなかで形成されていった国内外の医師や学者の知的ネットワークを辿りながら、その後の日本の近代化を準備することにもなった彼らの営みを生き生きと描き出す。
目次
第1章 天然痘に立ち向かう
第2章 ジェンナーの牛痘ワクチン
第3章 周縁を取り込む
第4章 オランダとのつながり―バタヴィア、長崎、江戸
第5章 ネットワークを構築する―蘭方医たち
第6章 種痘医たち
第7章 中央を取り込む
著者等紹介
ジャネッタ,アン[ジャネッタ,アン] [Jannetta,Ann]
1932年生まれ。ピッツバーグ大学歴史学部名誉教授。日本近世史
廣川和花[ヒロカワワカ]
1977年生まれ。大阪大学適塾記念センター准教授。近代日本医学史・医療史
木曾明子[キソアキコ]
1936年生まれ。大阪大学名誉教授。文芸学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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narihira
1
麻疹も軽けりゃほうそも軽い、両方軽けりゃありがたい2016/08/05
北丸
1
「江戸の理系力」よりもずっと面白い。世界中の医者が種痘撲滅のための戦いを繰り広げていたというグローバルな視点から見る、日本の医療事情。 手塚治虫「陽だまりの樹」でも結構重要なテーマになってる種痘の話なんだけど、手塚良仙の名前が出てきて胸がときめいたw2015/08/30
Hirokazu Ikuta
1
天然痘に牛痘ワクチンが有効なことが証明されたのが1800年頃。世界中に一気に広がったワクチンも鎖国中の日本には届かなかった。ワクチンの輸入が実現したのは1850年頃。貴重なワクチンを日本全国に数年のうちに広めたのは蘭学者のネットワークだったというお話。当時、保存が難しかったワクチンは、未感染の子供を順番に感染させて運ぶという方法だった。Jin(仁)にはまって以来、医学の歴史に興味のある私。仕事もワクチン関係が多いので、とても興味深く読めました。佐賀藩鍋島氏が嫡男に接種して安全性をアピールしたそうです。2014/05/26
150betty
1
(☆4)ある種の感動を覚える。以前、病の日本史だか何かで読んだ、幕末や明治期に東洋医学ではなく西洋医学が、実際に病を救ったことによって信頼を獲得していったという実例をまざまざと見せつけられる本。対症療法ではなく、再現性を持つ科学の凄みを感じる本。ただ、普通の人はそこまで感動しないかも。2014/03/06
ダックだ
0
世界各地に点在していた体験としての天然痘ワクチン。畜産業では生活の中でワクチンとしての効用があったが、それがどんな原理や原因で天然痘に感染しても軽度に済んだかがわからないが、確実に存在していた知見、それが大航海時代を経て、知識が収斂されることでパズルのピースが一つずつはまり、科学の発展とともに、それがワクチンとしての体をなし、不治の病、決死の病として人類の脅威だった天然痘を克服するという経緯までを長大に研究した一冊。読むにはなかなか根気がいるが、その意味はある一冊2024/06/12