私たちは“99%”だ―ドキュメント ウォール街を占拠せよ

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  • サイズ A5判/ページ数 247p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784000257787
  • NDC分類 309.025
  • Cコード C0036

出版社内容情報

2011年9月17日,「ウォール街を占拠せよ」を合言葉に,貧困・格差の是正を求める運動が始まった.極端な経済格差に耐えかね,若者たちが声を上げたのだ.「占拠」に共感を寄せたS.ジジェク,J.バトラー,A.デイヴィス,R.ソルニットらの発言・エッセイと,ニューヨークをはじめとする全米各地の運動経過により,「占拠」の始まりの2か月間を活写する.

■ 訳者からのメッセージ
 ニューヨークはこれまで,アメリカンドリームという「神話」を吸引力に,米国人や移民の夢とエネルギーをのみ込んできた.若者たちは,自由と機会均等という米国の「理想」を糧に,身を粉にして働けば必ず報われる,必ず夢がつかめると信じてきた.
 だが,金融危機と大不況で,人々は「現実」を直視せざるをえなくなった.5万ドル(約400万円)もの学生ローンを抱え,正規の仕事が見つからず,利子の返済が精一杯の30代男性教師.自身の障がい者手当てをカットされ,年老いた母親が住居差し押さえの憂き目に遭った40代男性.「ウォール街を占拠せよ」(OWS)は,こうした人たちの「怒り」をスポンジのように吸い上げ,全米へと拡大していった.「勝利がすべてじゃない.勝利をつかむしかないんだ」――.OWSは,そんな「強さ」最優先の米国にも,理想と現実の乖離に悩む普通の人たちがいることを浮き彫りにした.本書には,日本人と同じように悩み,傷つき,自問する等身大の米国人たちの生の声がぎっしり詰まっている.
(「訳者あとがき」より)

■ 編集者からのメッセージ

 2011年は,世界各地で市民が立ち上がり,抗議の声を上げた年でした.アラブの春,日本の脱原発運動,ギリシャやスペインのスト……,そして「ウォール街を占拠せよ」.
 2011年9月17日,「ウォール街を占拠せよ」を合言葉に,貧困・格差の是正を求める運動がニューヨーク,ウォール街近くのズコッティパークで始まりました.「ウォール街」に象徴される,行き過ぎた金融資本主義がもたらした,“1%”の富裕層と“99%”の「私たち」という分断――人々は,「占拠」を通じて分断に抗議し,空洞化した民主主義を問い,オルタナティブを求めました.当初参加者は少なかったものの,SNSを通じて瞬く間に共感が広がり,10月15日には世界の80以上の国,1000以上の都市で,合計数十万人が参加するまでに拡大しました.
 しかし,当局は見過ごしてはおらず,11月15日,ニューヨーク市警はズコッティパークからの強制排除を決行しました.それでもなお,「占拠者たち」は形を変えて運動を継続しています.
 本書は,「占拠」に共感を寄せたスラヴォイ・ジジェク,ジュディス・バトラー,アンジェラ・デイヴィス,レベッカ・ソルニットらの発言・エッセイと,「占拠」開始から強制排除に至るまでの,ニューヨークをはじめとする全米各地の運動経過で構成されています.いま世界で最も重要な政治的出来事の,二度と戻って来ない「始まりの2か月」を,本書とともにたどってみてください.

■ 編者・訳者・解説者紹介

[編者]
『オキュパイ!ガゼット』編集部(Editors of “Occupy! Gazette”)
「まえがき」参照.

[訳者]
肥田美佐子(ひだ みさこ)
フリージャーナリスト(ニューヨーク在住). 2008年6月,「過労死の国」(英文)で,国際労働機関(ILO)の第1回メディア賞を受賞.訳書に,デイヴィッド・K.シプラー『ワーキング・プア―アメリカの下層社会』(森岡孝二・川人博と共訳,岩波書店,2007年),ジュリエット・B.ショア『プレニテュード―新しい〈豊かさ〉の経済学』(森岡孝二監訳,川人博ほかと共訳,岩波書店,2011年)など.
http://www.misakohida.com/

[解説]
湯浅 誠(ゆあさ まこと)
反貧困ネットワーク事務局長,NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局次長.1990年代より野宿者(ホームレス)支援に携わり,2008~09年の「年越し派遣村」では村長を務める.著書に『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書,2008年,第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞,第8回大佛次郎論壇賞),『岩盤を穿つ―「活動家」湯浅誠の仕事』(文藝春秋,2009年)など.

■ 目次

まえがき

Ⅰ ウォール街を占拠せよ

一つの「ノー」,たくさんの「イエス」
マリナ・シトリン

トップ一%の真実
ダグ・ヘンウッド,米国連邦議会予算事務局

アメリカンドリームをあきらめて
マルコ・ロス

いま,立ち上がる
マニッサ・マハラワル

合意の神学
L・A・カウフマン

ドラムサークル
マーク・グライフ

自分自身に恋するなかれ
スラヴォイ・ジジェク

ニューヨーク市警と「ウォール街を占拠せよ」 ――スタイルの衝突
アレックス・ヴィターレ

そこに分断が存在する,不正もまた……
ジョディ・ディーン

チャイナタウンの不在
オードリー・リム

「停止と捜検」はやめろ
スヴェトラーナ・キットー,セレスト・デュピュイ=スペンサー

労組,ふたたび
ニキル・サヴァル

役員室を占拠せよ
マーク・グライフ

「脱」占拠
アンジェラ・デイヴィス

ご主人の道具を捨てて,よりよい家を建てる
レベッカ・ソルニット

ホームレスという問題
クリストファー・ヘリング,ゾルタン・グルック

公の身体たち
ジュディス・バトラー

ランドリー・デー
キース・ゲッセン

Ⅱ 「占拠」の風景

ニューヨーク
アトランタ
オークランド
フィラデルフィア
ボストン

Ⅲ 過去からの視線

アメリカの危機
トマス・ペイン

[解説]民主主義と格差問題が交差する領域     湯浅誠
     ――「民主主義の学校」としてのOWS運動


訳者あとがき     肥田美佐子

内容説明

二〇一一年九月一七日、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉に、貧困・格差の是正を求める運動がニューヨーク、ウォール街近くのズコッティパークで始まった。「ウォール街」に象徴される、行き過ぎた金融資本主義がもたらした、“一%”の富裕層と“九九%”の「私たち」という分断―占拠者たちは、「占拠」を通じて分断に抗議し、空洞化した民主主義を問い、オルタナティブを求めた。「占拠」に共感を寄せたスラヴォイ・ジジェク、ジュディス・バトラー、アンジェラ・デイヴィス、レベッカ・ソルニットらの発言・エッセイと、「占拠」開始から強制排除に至るまでの、ニューヨークをはじめとする全米各地の運動経過により、「占拠」運動の「始まりの二か月」を活写する。

目次

1 ウォール街を占拠せよ(一つの「ノー」、たくさんの「イエス」;トップ一%の真実;アメリカンドリームをあきらめて;いま、立ち上がる;合意の神学 ほか)
2 「占拠」の風景(ニューヨーク;アトランタ;オークランド;フィラデルフィア;ボストン)
3 過去からの視線(アメリカの危機)

著者等紹介

肥田美佐子[ヒダミサコ]
フリージャーナリスト(ニューヨーク在住)。2008年6月、「過労死の国」(英文)で、国際労働機関(ILO)の第1回メディア賞を受賞

湯浅誠[ユアサマコト]
反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局次長。1990年代より野宿者(ホームレス)支援に携わり、2008~09年の「年越し派遣村」では村長を務める。著書に『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書、2008年、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞、第8回大佛次郎論壇賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シュシュ

15
2011年の「ウォール街を占拠せよ」の運動の参加者たちの証言を集めたもの。当時、ニュースでこの運動を見て驚いたのは、占拠している人に外部から食料などの支援をしている人がいたことだった。知恵の産物「人間マイクロフォン」がユニーク。スラヴォイ・ジジェクの「仕事や拷問がアウトソース(外部委託)され、結婚相談所に恋愛を外注するようになってから、私たちは、政治参加までアウトソースしていたことにようやく気づきました。」というスピーチを胸に刻みたい。この夏、生まれて初めてデモに参加して、この本のことを思い出した。2015/10/02

壱萬弐仟縁

7
99%は日本企業形態も中小零細企業だ。本著でも犠牲になっているのはグローバリゼーションとか、新自由主義とか、市場原理至上主義といったものからというのは簡単に理解できる。今後、TPPで日本人もさらなる犠牲を強いられることは目に見えている。S.ジジェクも書いている。「問題は、宴の後、普段の暮らしに戻らなければならないこと」(45頁)との指摘は、E.F.シューマッハーの『宴のあとの経済学』ちくま文庫 をも彷彿とさせる。「割れ窓」理論をA.ヴィターレが紹介している。割れた窓を放置すると犯罪が増幅(50、55頁)。2013/03/11

むとうさん

6
そういえばこんなデモも2年ほど前にあった。「ドキュメント」の名前通り参加者や支援者、取材に行った人が現場の様子や声をまとめたもので、NHKスペシャル的な何か。人間マイクロフォンはよく考えたなという感じ。他にも洗濯のためにトラックを頼んだり(!)バーガーキングのトイレが使用禁止になったり、デモしてる人たちの「生活」を描写していて面白い。ついでにアメリカの警察は催涙弾だの割と短気だな。ツイッターのつぶやきが出てきたり、YouTubeの動画が出てきたり、「生の声」を知るのに意味のある本。2013/12/31

いせやん

2
ウォール街占拠運動、オキュパイガゼットの参加者たちが見た運動の光景が伝わる一冊だった。そこには参加者の、ともすれば偏っていかねない感情も含まれており、その点については読んでいくうえで留保せねばならない。けれど、だからこそ、参加者たちにとって運動がどう映っていたのか、という最重要点を垣間見ることができた気がする。2013/01/10

1
p.59 「そもそも占拠は、民主的戦略ではない。資本主義が根ざす根本的な分断を明らかにする軍事的・分裂的な戦術なのだ」 オキュパイ運動が何を目指しているのかよくわからず読んだけど、こことバトラーの「公の身体たち」のスピーチが印象に残った。2021/08/28

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