出版社内容情報
ジークムント・フロイト(1856─1939)とアンリ・ベルクソン(1859─1941).同じ時代を生き,同じ人的ネットワークに属していた二人は,独自の思索を経て同じ領域に迫っていたにもかかわらず,直接の交流はおろか著作での言及も皆無に等しい.この謎めいた事実の意味は何か.前人未踏の困難な問いに挑む.
内容説明
ジークムント・フロイト(1856‐1939年)とアンリ・ベルクソン(1859‐1941年)―ウィーンとパリで同じ時代を生きた二人は、ピエール・ジャネやウィリアム・ジェイムズらとともに同じ知のネットワークに属していたばかりか、同じ対象に関心を抱き、独自の思索を展開した末、対極から同じ領域に迫ろうとした。しかし、彼らには直接の交流はおろか、著作での言及も皆無に等しい。この謎めいた事実は何を意味するのか―前人未踏の困難な問いに挑み、二人の知の巨人を隔てる深淵に肉薄する、渾身の書き下ろし論考。
目次
第1章 生
第2章 夢
第3章 抑圧
第4章 自我
第5章 進化
エピローグ エスが企てる
著者等紹介
渡辺哲夫[ワタナベテツオ]
1949年茨城県生まれ。1973年東北大学医学部卒業(医学博士)。都立松沢病院、東京医科歯科大学、正慶会栗田病院、稲城台病院を経て、現在、いずみ病院(沖縄県うるま市)勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fseigojp
21
著者も言う通り、小林秀雄のようにフロイドの夢判断、ベルクソンの物質と記憶を読むべきなんでしょうが、とりあへずこれで。。。。2017/12/18
funuu
12
69歳の精神科医の著作。「人間であることは、ただひたすら未来のために生きていくことである。ここには時間的自己疎外が露呈している。人間であることは、ただ未来のために生きていくことであり、ここには未来という空虚に身売りしながら現実をも空虚化して生きるという生存者の時間的倒錯すら現れている。」「人間は、もし気が違っていないとしたら、別の違い方で気が違っていることになりかねないほどに、必然的に気が違っているものである。 パスカル」フロイトとベルクソン等が鳥瞰できる本。若者には危険な本かもしれません。2018/03/18
清水聖
2
2022年最初の読了本。まあ、難しい本でしたこと。でも、最初の小林秀雄氏のエピソードとか、ここ最近の読書体験でも、やっぱり、難解なら何回も読めばいいし、ダイジェストじゃ分からないことも本当にあるから。2人の大思想家が交わらなかったのは、偶然か必然かはどうでもよくて、とにかく…そこにまだまだ「おいしいところ」があることを結果的に示して、残してくれたということ。2人と「私」の間にいる彼らにも負けない(と強く思う)他の大思想家の遺産もヒントというか材料にして。まずは自分の頭で考えて、自分の言葉で語れるように!2022/01/11
りっとう ゆき
1
ベルクソンの倒立円錐体の先端がフロイトで言う自我、底面(図で言うと逆さまだが)に向かって無意識(究極、死)っていうこの図式をもとに話が進む。おもしろい。先端の自我部分は緊張してるけど無意識方面は緩んで、それが自然=フロイトの言う死の欲動にもつながる。ベルクソンは先端側を意識してるけど、フロイトは底面に向いてる、だけどそれに抗おうとしてるからこその精神分析、という感じかな。もちろん円錐の中は定まった図式じゃなくうにゃうにゃしてる。あと、神秘主義の話とか。全部概念といえばそうなのに妙な納得感があった。2024/11/04