感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiro
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著者の本は何冊か積ん読のままで今回初めて読んだ。都市を博物館に見立てて、博物館の持つ様々な機能、保存、修復、発信、評価などを、具体的にヨーロッパの9つの都市に当てはめ、各都市でそうした機能を果たした人々とその業績を語ったエッセイ、と言えばこの本の説明になるだろうか。登場する街はベネツィア、バルセロナ、ジュネーヴ、エディンバラなど。対する人物群はラスキンやルソーやスティブンソンなど多数。興味ある視点、未知の情報に触れてまたヨーロッパへ行きたくなった。それから紹介されたカニグズバーグやラスキンも読んでみたい。2017/11/18
Majiska
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様々な趣の都市を様々な側面から眺め、あちらこちらに話が展開するのに楽しく身を委ねていると、読み終える頃には町歩きの楽しさの本質が自分の意識の内に輪郭鮮やかに描き出されている事に気が付いて驚く。地勢が人々を擁し、その生活が都市を作り、都市は文化を育み、文化は歴史と物語を紡ぎ、そうした活動がまた都市を作り変えて独自の景観を作り出してゆく。街にその痕跡を見出す時、蓄積された過去と物語がまるで地層のように語りかけてくる。『都市は博物館』という切り口でそれを教えてくれるこの著者はさながら優秀な学芸員のようです。2014/03/29
もとせ
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2頁【博物館の価値は、もちろん一義的には所蔵する資料の質と量にかかるわけだが、それとは別に学芸員の役割も大きいのではないか、と私はかねがね思っている(略)ある都市の魅力にとりつかれて、街の隅々まで知り尽くし、その良さを人に伝えようとする「ボランティア学芸員」が現れてもおかしくない。ジョイスのダブリン、ディケンズのロンドン、ユゴーのパリ、ヴァザーリのフィレンツェ。いや、フィレンツェなら今ではメアリ・マッカーシーかな。彼らの眼を通して見るとき、都市はときに思わぬ輝きを見せたり、「発見」の悦びを与えてくれる。】2013/05/03