出版社内容情報
なぜいまあらためて詩を精読するのか．言語表現をこまやかに読みとることの意義を力強く説き，さまざまな英詩を自在に引きながら，目の覚めるような読解の妙をくりひろげる．細心の注意を傾けた読みこそが，人間社会の文化，歴史，政治の全体と向き合う不可欠の出発点なのだ
内容説明
なぜ今あらためて詩を精読するのか。言語表現をこまやかに読みとることの意義を力強く説き、さまざまな英詩を自在に引きながら、目の覚めるような読解の妙をくりひろげる。言葉の響き、語調、リズム、文彩、含意、曖昧さ、ありうべき文脈―テクストに対する細心の注意を傾けた読みの実践こそ、人間社会の文化、歴史、政治の全体と向き合う必須の条件なのだ。大家イーグルトンが並々ならぬ読みの力量を存分に発揮して放つ英詩案内。
目次
第１章 批評の役目
第２章 詩とは何か
第３章 フォルマリズム
第４章 形式をたずねて
第５章 詩をどう読むか
第６章 四篇の自然詩
用語集
著者等紹介
イーグルトン，テリー［イーグルトン，テリー］［Ｅａｇｌｅｔｏｎ，Ｔｅｒｒｙ］
１９４３年生まれ。現代イギリスを代表する文学・文化理論家。オックスフォード大学教授、マンチェスター大学教授を経て、現在、ランカスター大学教授
川本皓嗣［カワモトコウジ］
１９３９年生まれ。東京大学大学院博士課程中退。専攻、比較文学・比較文化。大手前大学学長、日本学士院会員、東京大学名誉教授（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュン
10
収められていた詩に笑う。 『ちょっと一言』(ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ) "冷蔵庫に 入っていた すもも/ たぶん君が 朝食のために とって置いたのを 失敬した/ ごめん うまかった 実に甘くて 冷たくて" ようするに、詩の世界では倫理的な未熟さが許される。詩の中で、人はなんども初恋の人を抱いたりディスれたりできる。2021/06/07
misui
10
文学の中でも詩は特別に創造的なものとされ、ゆえに神秘化されるきらいがある。だがそうした偏見を抜きに読むと、詩は言語の運用によって美を追求するという形で、実のところ他の分野と同じく政治的な力がせめぎ合う場である。本書は政治志向の強い批評家であるイーグルトンが、特に形式の面に注目して詩を読み込む。対象は英詩なのでざっと目を通しただけだが、詩を書くというのが読まれることを前提とした社会的な行為であって、それがどのような形式をとるかが問題とされるのは、納得のいくところ。こういう視点を持っておくのもいい。2014/03/29
hitotoseno
6
「文学とは何か」でおなじみのイーグルトンが、満を持して放つ詩の精読入門書。理論家は精読の方法を知らない、という偏見がある、と著者は言うが、実のところ理論をつぶさに比較するにも批評眼を備えている必要があり、批評眼を養うためにも文学を精読するのは必須なのである。リテラシーの語源はliteratureと相通ずるというわけだ。それにしても著者の言う通り、文学研究がこんなに面白いのはあまりに罪深い。助成費をもらってこんなにスリリングな研究が出来るというのは、一般市民からしてみれば羨ましくて妬みさえ起こしてしまう。2013/04/16
ヒナコ
5
詩とは言葉の単なる自意識的でデタラメな羅列ではなく、言葉を並べる形式と言葉の意味内容との参照関係に成立している、というイーグルトンの自説が（それこそ詩の最後で言葉が繰り返されるように、そして、そうやって繰り返す形式自体が「もう何も言うことはない」と意味をほのめかすように）それ自体の確証のように何度も何度も具体的な詩の解釈を通して明らかにされる。抽象的な文学理論が各々の詩を通じて受肉しあう様は単純に面白い。彼の導きによって、詩が全く好きでない人でも本著で登場する詩の何編かをきっと気にいるようになるだろう。2017/03/01
Mark.jr
3
イギリスの詩人W.H.Audenは「詩は言葉で出来た工芸品であり、テーブルやオートバイと同様に熟練した腕でしっかりと組み立てられなければならない」ということを言っていましたが。本書は、まさに詩というものがその言葉通りであることを説明したものです。言葉の響き、語調、リズム、比喩、形式、意味などの観点から詩を解きほぐしていく様は、今時ないぐらい批評の王道を堪能できます。文章も淀みなく明瞭で、間接的に小説などのフィクションも批評対象にカバーされており、読書を嗜む人は読んで損はないかと。2021/08/21
