出版社内容情報
山脈によって内陸アジアと隔てられ、陸では東アジア及び西アジアと、海洋では西方とつながる南アジア世界と東南アジア世界。初期国家の形成と諸帝国の盛衰、サンスクリット語・文化の伝播、インド化とマンダラ政体、ヴァルナ(カースト)制などを軸に、両者が緊密に交流しつつ独自の地域社会を形成する過程を包括的に提示する。
内容説明
豊かな自然環境に恵まれ、陸では西・東アジアとつながり、海洋では交易の要衝として繁栄してきた南アジアと東南アジア。初期国家の形成と諸帝国の展開、ヴァルナ(カースト)秩序の変遷、サンスクリット文化の伝播、「インド化」とマンダラ政体論などを軸に、二つの世界が緊密に交流しつつ独自の地域社会を形成する過程を包括的に提示する。
目次
展望(南アジア世界の形成と発展;東南アジア世界の形成と展開)
問題群(南アジアにおける国家形成の諸段階;インド洋・南シナ海ネットワークと海域東南アジア;サンスクリット語とパーリ語のコスモポリス;南アジアにおけるムスリムの活動とイスラームの展開)
焦点(南アジアの古代文明;ドンソン文化とサーフィン文化―東南アジアの鉄器時代文化;東南アジアの古代国家;女神信仰とジェンダー;アンコール朝の揺れ動く王権と対外関係;インド洋海域史から見た南インド)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピオリーヌ
17
三田昌彦「南アジアにおける国家形成の諸段階」より。アショーカ王の名が日本でも有名なマウリヤ朝。前三世紀に南アジアのほぼ全域を統合する大帝国を打ち立てたマウリヤ朝。古代の帝国は一般に形成されるが、マウリヤ帝国は湿潤な稲作地帯から発しており、世界的に特異であった。首都パータリプトラはガンジス川中流域に位置しており、稲作の穀倉地帯である。マウリヤ帝国は分権的な性格を有し、点と線の統治であった。その帝国形成はかなり早熟で、領域内の経済的格差が極めて大きかった。「この早熟的な帝国形成の出発点と2023/12/30
MUNEKAZ
15
先史時代から中世までの南アジア・東南アジアの歴史を概観する。扱う地域も時間軸も広いので、前半の通史の部分は駆け足気味でちょっと物足りない印象。ただ後半の「焦点」では、考古学の成果による古代文明の解析や、宗教の伝播に関するものは興味深いものが多い。ヒンドゥー教における女神信仰の篤さと、それに反比例するような現実世界の女性の地位のギャップを扱った論考は、ジェンダーに目配せした今の時代らしい着眼点なのではないかと思う。ある程度、インドや東南アジアについて知識を付けてから読むと、発見が多くて面白いかな。2022/07/05
kenitirokikuti
7
図書館にて▲馬場紀寿「サンスクリット語とパーリ語のコスモポリス」。これは同氏による『仏教の正統と異端-パーリ・コスモポリスの成立』の部分に近いようだ。インド学者シェルドン・ポロックによる「サンスクリット・コスモポリス」論を借りて、「パーリ・コスモポリス」論を立てる。ネーミングから察せらるように、アレクサンダー大王の征服によりギリシャ語が地域共通語になったあれらがモデルやね/スリランカには史書が成立しため、新しい王家が旧王都の僧伽を庇護して正統性を得る慣習ができ、これが東南アジアに伝播した。2023/08/12
Go Extreme
3
南アジア世界の形成と発展: 原史から歴史へ 中世初期地域王権の成立と地域社会の形成 イスラームの展開と在地文化との交流 東南アジア世界の形成と展開 南アジアにおける国家形成の諸段階 インド洋・南シナ海ネットワークと海域東南アジア サンスクリット語とパーリ語のコスモポリス 南アジアにおけるムスリムの活動とイスラームの展開 南アジアの古代文明 ドンソン文化とサーフィン文化 東南アジアの古代国家 女神信仰とジェンダー アンコール朝の揺れ動く王権と対外関係 インド洋海域史から見た南インド2022/07/08
イツシノコヲリ(丹波國)
2
現時点では南アジア・東南アジアの古代中世史では最新の論文集となっている。様々な論考があり勉強になったが、交易・流通関係の論考が多く印象に残った。2023/12/29