岩波ブックレット
先人たちの「憲法」観―“個人”と“国体”の間

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  • サイズ A5判/ページ数 55p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784000092180
  • NDC分類 323.1
  • Cコード C0336

出版社内容情報

今年,憲法調査会が発足し,「憲法」が論じられている.本書では永井荷風,森鴎外など先人たちの的確な時代認識から学びつつ,現代の疑問に答えていく.彼らの時代との格闘に無知なままでの改憲を見過ごすわけにはいかない.

内容説明

本書では、これまで編者が折にふれ接してきた書きもののなかから、特に若い世代の人たちにも知ってほしいと思うものを、とりあげています。日本国憲法がそこにつながっている近代立憲主義とは、つまるところ、一人ひとりの個人がその生き甲斐をよりよく追求できるためにこの世の中を近づけてゆこう、という考え方です。それに対し、日本の近代を通して、立ちはだかってきたのが「国体」という考えです。この二つを対比する観点から思考のきっかけになる素材を中心に、編者としては選んでいます。各項目の並べ方は、一部の例外を除きテキストが公表された順序―日記の場合には書かれた日付になりますが―に従っています。歴史の流れを読みとってほしいからです。渡辺一夫の項をあえて最後に置いたのは、私たちの世の中の今のいまにまっとうに向き合おうとするとき、戦後のこの時点まで遡って「事ノ理」を考えてみることが必要ではないか、と考えるからです。

目次

共和のエートスを読みとる(玉虫左太夫『航来日録』)
「恢復的民権」と「恩賜的民権」(中江兆民『三酔人経綸問答』)
「人民ノ天然所持スル権利」(伊藤博文(首相)・森有礼(文相))
「党派なるものは」(『田中正造日記』)
立憲政治の外観と精神風土(永井荷風『紅茶の後』)
文芸・学問の自由と「反動者」(森鴎外「沈黙の塔」)
権力・金力と「個人」(夏目漱石「私の個人主義」)
「人類」「個人」「人間」か「国民」か(石橋湛山「一切を棄つるの覚悟」)
政治的良心と文化的発展を(馬場恒吾「国に人格がある」)
「国体ノ本義」(国体明徴に関する政府声明第二次)〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Takao

2
2000年9月20日発行。幕末からの17人の「先人」たちの短いテキストに樋口陽一さんがコメントを付す。冒頭の、万延使節団(1860年)に随行した玉蟲左太夫の文章「国例(立法)に至りては、衆部の行ふ処にして、従令大統領と雖ども、庶民と共に之を守りて犯す能わず」は、まさに立憲主義の本質を見抜いている。155年前のことだ。諸国を巡って「自由」「民主主義」「法の支配」と大ボラを吹いている「最高権力者」にも読ませたい。私も、先人たちに学ぶ謙虚さを失わないよう自戒した。2015/10/10

フクロウ

0
「日本国憲法の条文のうち一番肝心なものを言えといわれたら、私はためらいなく、「個人として尊重される」としている第13条を挙げるでしょう。」(3頁)。玉蟲左太夫はアメリカにアンティゴネーを見、それを的確に描写した。「その重要さを承知した上で、しかし森の主張は、私たちに、文脈ぬきで「進んだ」議論をすることの危うさを、教えてくれるようです。」(12頁)。「日本ハ立憲の実力なし。」(13頁)「芸術の認める価値は、因襲を破る処にある。」「学問だつて同じ事である。学問も因襲を破つて進んで行く。」(20頁)。2019/07/03

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