内容説明
オイディプスが先王殺害犯人の探索を烈しい呪いの言葉とともに命ずる発端から、恐るべき真相発見の破局へとすべてを集中させてゆく緊密な劇的構成。発端の自信に満ちた誇り高い王オイディプスと、運命の逆転に打ちひしがれた弱い人間オイディプスとの鮮やかな対比。数多いギリシア悲劇のなかでも、古来傑作の誉れ高い作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takuya Hattori
3
初めに話の種を明かすことで、オイディプスらの悲劇がより浮き彫りとなり、物語から目が離せなくなります。また、解説でも述べられているように、本作の悲劇はすべて登場人物たちが善かれと思い行動した結果から生まれます。だから余計に辛い。それは、「およそ数ある不幸のなかでも、みずからえらんで出来させた不幸ほど、人の心をいたましめるものはありますまい」という台詞にもあらわれています。悲劇ですが、スリリングでエンタテインメント性に富んだ傑作です。2015/06/06
viola
3
大きめ岩波文庫なので、読みやすい。結末は始めから知っていたけど、オイディプスとイオカステが結婚して数十年たってから始まるストーリーだとは思っておらず・・・・・。 かなり好きです。でも、これ、嫉妬??嫉妬ではないような・・・・。2010/05/31
黒猫トム
2
敢えて岩波文庫版。 横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』よりもえっぐい設定なのは知ってるので終章読みたくなかった。 読後感悪いが、悲劇として紛れなく傑作なんでしょう。これ以上「取り返しのつかないことをしてしまった」感をぶちまけるシナリオってあるのか。人類が創作した中でこれほど壮大なフラグ立てた/ブーメラン投げた人物居るのか。あゝオイディプス、キミのことは忘れないよ。2023/04/28
Witch丁稚
1
あらかじめぼんやり知っていたあらすじのほとんどが訳者の前補足ですでに済んでいること扱いされていたので、いったいこれ以上なにが本編に書いてあるのだ!?と心配だったが、面白かった。なるほど観客に共通の事前知識があればクライマックスだけを切り取ってドラマにできる。鬼退治だけを全力で盛るみたいに。ネタバレじゃん進むうちに解説されるのに!と最初は思ったが、後から披露されるには出来過ぎ感が強いのかもしれない。人としてできる限りにあらがおうとしたが運命はそれを上回ることがある。それでも最善を尽くすのが人間。2016/05/06
星規夫
1
本文の前頁にテバイ王家の家系図が掲載されているという恐るべきネタバレがあったが、それをものともしない迫力がある。オイディプスは何も知らなければ平和に過ごせていたかもしれないが、国難にあって名君たるオイディプスが真実を究明しないわけがない。ギリシアの神様は鬼畜だ。2014/02/18