内容説明
新しい思想を持ち、人間主義の教育によって不合理な社会を変えて行こうとする被差別部落出身の小学校教師瀬川丑松は、ついに父の戒めを破って自らの出自を告白する。丑松の烈しい苦悩を通して、藤村は四民平等は名目だけの明治文明に鋭く迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Atushi Ueno
3
出生を明かしてしまうとたちまち社会から追放されてしまうためひた隠しをするように親に戒めのように言われていた。夢見た仕事につくことができた嬉しさとは裏腹に自分と同じ部落差別出身のものが粗野に扱われている姿を見て心が痛む気持ちが募っていく。最後には自身も部落差別出身であることを明かしてしまう。2015/07/26
まし
2
後半に向けて緊張感が高まってぐっと引きつけられて、どきどきしてしまう。結末は救いを作ってあげたかったのかもしれないが、やはり逃げとしか感じられず残念。全編を通して描かれる信濃の風景や世相や風俗、言葉遣いは、時代の雰囲気をふわりと浮かび上がらせて、ちょっと物哀しくも美しい。 2012/08/22