出版社内容情報
税制、福祉、中絶、死刑、同性婚、環境規制…。何が正義かをめぐって社会が分裂するとき、解決法はあるのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
33
2013年初出。道徳の本質:利他性、無私、他者のために自らが進んで犠牲になる姿勢(30頁)。道徳は、コモンズの悲劇を回避するために進化したが、常識的道徳の悲劇を回避するために進化したのではなかった(傍点34頁)。道徳マシン:脳に組み込まれた協力のための心理的ツール(84頁)。最後通牒ゲーム:本誌的に、資源分配における公平感を測定(92頁)。バブコックとローウェンスタインの交渉実験:自分が争い(原告か被告か)のどちら側にいるか知ったことで、何が公正か考えを無意識に変える(111頁)。2016/02/24
ntahima
21
【県図書11】『生物学的に見れば私たちの脳は、集団内で協力を育み、集団間で競争するように設計されている』と著者は言う。この偏向を極限まで煮詰めれば己の正義を普遍善、異論を絶対悪と見做して憎悪の鉄槌振り回すという歴史上幾多見られた悲劇を生じせしめる。先日読了した『ファスト&スロー』が人間の不合理性に関する自警の書なら、本書はその生物学的軛を克服し共存へ向かうためのひとつの試みだと言える。但、上巻を読んだ時点では著者の現状認識には激しく共感するも、解はなかなか見出せない。下巻を読んでからもう一度考えてみたい。2016/01/06
テツ
11
人間の正しい在り方とは何か。それはどんな形をしているのか。「ぼく」と「ぼくたち」では正しさの形が異なるように感じられることが多々あるけれど、それが対立したときにどちらを優先すべきなのか。そんな誰もが朧げにでも考えたことがある諸々を功利主義を肯定する筆者の視点から丁寧に積み重ねていく。道徳的な直感は、それに反した場合に湧き上がる嫌悪感は、何に根ざしているのか。自らの内側にある道徳観に日頃は考えることもなく何となく身を委ねているけれど、それが発生した根源を考えてみるのはとても面白い。下巻も早めに読みます。2022/10/03
sayan
11
本書は、「個人の権利」と「より大きな善」の緊張関係=道徳の考え方を提供する。その補助線として著者は功利主義をとりあげる。ジョン・ロールズは「人を突き落とす・落とさないを決めるにはお粗末な原理」と功利主義を一刀両断にする。本書が圧倒的に刺激的であるのは道徳の因数分解の仕方だ。道徳は強力を推進するための生物・文化進化によって設計された心理的能力とし、直観的反応を通じて実現を試みるが、異なる道徳的直観は大きな衝突の源になり、そのため人は論理的思考をもって合理化をはかる=功利主義、と理路整然と説明しきるところだ。2018/11/20
くり坊
7
エキサイティング! すっかりジュシュア・グリーンファンになtらちころで、下巻へGO2016/08/06